低遅延な工場リモート化をIOWNで実現する、通信網管理の省力化に貢献するデモ展示:製造ITニュース
NTTは同社の技術研究の成果などを紹介する「NTT R&Dフォーラム2023」は、IOWNの「APNサービス」を活用した、工場のデジタル化やリモート化に関するデモ展示を行った。
日本電信電話(NTT)は同社の技術研究の成果などを紹介する「NTT R&Dフォーラム2023」(2023年11月14日〜17日、NTT武蔵野研究開発センタとオンラインで開催)で、光ベースの次世代ネットワーク基盤構想「IOWN」の「APN(All Photonics Network)サービス」を活用した、工場のデジタル化やリモート化に関するデモ展示を行った。
将来的には工場内ネットワークまで光通信に
今回の展示では、NTTの横須賀研究開発センタ(神奈川県横須賀市)を生産拠点、NTT武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野区)を生産設備などのデータやオペレーションを集約した運用拠点と見立てて、両者間をAPNで接続し、APNコントローラーやネットワーク制御用のAI(人工知能)などと組み合わせた通信システムのコンセプトデモを紹介した。なお、今回のデモは実際に両拠点間をAPNで接続したわけではないが、NTTは同社の大規模言語モデル「tsuzumi」の学習プロセスでAPNを使い同拠点間で実現した実績がある。
NTTは現在、離れた場所に置いた端末装置間でE2E(エンドトゥーエンド)の光波長を結ぶAPNサービスを提供している。これを生産拠点と遠隔地にある運用拠点を結ぶ回線として使用することで、従来より高容量かつ低遅延のデータ交換が可能になる可能性がある。NTTの担当者は「工場のリモート化には、オペレーションの仕組みやデータを特定の運用拠点に一定程度集中させる必要がある。すると生産拠点と運用拠点の通信量が増大するが、そうした場合でもAPNを使えばリアルタイムかつ大容量の遠隔作業支援なども行いやすくなるだろう」と説明した。
デモで示した技術内容は大きく分けて2つだ。1つはAPN回線の開通や変更に関する処理の自動化だ。APNコントローラーと機能別専用ネットワーク(FDN: Function Dedicated Network)コントローラーを連携させることで、回線の増設に関わる判断や実行を自動化する仕組みを作った。光通信の回線増設においては熟練技術者が数週間以上を掛けて手動で設計、開通する作業が必要だが、これをスキルレス化して取り組みやすくするとともに、短期間での回線増設ができるようにする。
もう1つはAIを活用したネットワーク全体の予知保全の自動化だ。ネットワークを構成する機器やサーバ、アプリケーションのデータをAIで監視し、異常検知や故障箇所の推定につなげる。いずれの技術も、2025年開催予定の大阪・関西万博以降の実用化を目指す。
同担当者は今後の展望として、「拠点間の接続から工場内ネットワークにまで適用範囲を広げてE2Eの接続を実現するとともに、工場設備やセンサーなどアプリケーションレイヤーもAPNにつなげられるようにしたい」と説明した。
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