NTTがIOWN初のサービス実用化へ、光回線で従来比200分の1の低遅延通信を実現:組み込み開発ニュース
NTTは2022年11月14日、光ベースの技術によるネットワーク構想「IOWN」について、サービス第1弾として「IOWN1.0」を2023年3月から提供開始すると発表した。
NTTは2022年11月14日、光ベースの技術によるネットワーク構想「IOWN」について、同年3月からサービス第1弾として「IOWN1.0」を2023年3月から提供開始すると発表した。NTTの研究開発成果などをオンライン展示する「NTT R&Dフォーラム2022」(2022年11月16〜18日)において、NTT 代表取締役社長の島田明氏による基調講演の中で同内容の発表を行う。
通信を低遅延化かつ大容量化
IOWNはNTTが提唱する低消費電力などを特徴とする光技術をベースとしたネットワーク基盤の構想である。その初のサービス化となるIOWN1.0では、電子技術と光技術を合わせた光電融合技術を活用する「APN(All Photonics Network)」のサービスを提供する。
APNサービスは2拠点間を100Gbpsの専用線で結び、E2E(End to End)で光波長を専有した通信ができるようにするもの。従来の光回線による通信と比較して約1.2倍の容量かつ、遅延は約200分の1にまで抑えることができ、低遅延かつ大容量な通信環境を提供する。
今回のサービス開始で、島田氏は「通信の低遅延化については、IOWN構想の中で掲げていた目標数値をクリアすることになる」と説明する。さらに、遅延に伴う揺らぎも少なく抑えられるという特徴もある。同サービスの提供主体はNTT東日本とNTT西日本が担う。
低遅延化かつ揺らぎの少ない通信の実現で、遠隔医療や工場のスマート化、eスポーツなどの分野でより複雑かつ高度なサービスを提供できるようになる可能性がある。
データセンターが抱える課題として、将来的な爆発的な消費電力の増加が懸念されているという点が挙げられる。動画の高精細化やメタバース、IoT(モノのインターネット)といった技術の社会的普及によって通信データ量が増加して、それに伴い2030年には国内で現在の約6倍の90TWh、世界全体では約13倍の2600TWhにまで消費電力が増えるとする予測もある。光技術をベースとしたIOWN構想は、こうした課題解決に貢献する可能性がある。
NTTではさらなる低消費電力化を実現し得る、電子回路と光回路を融合させた「光電融合デバイス」の開発を進めるとしている。2023年度にはネットワーク向けの小型/低電力デバイスを、2025年度以降にはコンピューティング領域でのボード接続用デバイスを、2029年度以降にボード内チップ間向けデバイスの商用化を目指す。
また、IOWN1.0の次のサービスである「IOWN2.0」では、ボード接続の光化を主眼に置き、2025年度からはボード接続用デバイスをサーバ分野にも適用して、APNサービス以外にも適用範囲を広げる。2026年度には光電融合デバイスを用いたサーバを商用化する計画だ。2025年開催予定の2025年大阪・関西万博において、NTTのパビリオンでIOWN2.0の商用化を発表する予定だという。
IOWN構想における初めてのサービス化ということで、その意気込みを報道陣から尋ねられた島田氏は、「従来比200分の1という低遅延化は世界でも初めてで、かなりエポックメイキングなことだ。さまざまな分野で活用してもらえるよう事業展開を図っていく。こうした領域でも使えないか、といった顧客からのリクエストも期待している」と語った。
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