製造業の仕組みとODM(設計製造委託)【後編】:ODMを活用した製品化で失敗しないためには(2)(2/2 ページ)
社内に設計者がいないスタートアップや部品メーカーなどがオリジナル製品の製品化を目指す際、ODM(設計製造委託)を行うケースがみられる。だが、製造業の仕組みを理解していないと、ODMを活用した製品化はうまくいかない。連載「ODMを活用した製品化で失敗しないためには」では、ODMによる製品化のポイントを詳しく解説する。第2回のテーマは、前回に引き続き「製造業の仕組みとODM」だ。
製品化プロセスの中の協力メーカー
協力メーカーは、製品化プロセスの中で図2のように関わってくる。
外観デザインは、製品企画書ができた段階でデザイン企業に依頼する。しかし、この段階では、製品のイメージは伝えられるが、詳細な寸法を決めることはできない。詳細な寸法は設計を進めながら決まってくるからだ。よって、ODMメーカーに製品仕様書を提出した後、ODMメーカーとデザイナーとの数回の打ち合わせをもって外観デザインを決めていく。デザイン企業は、製品企画書が完了した直後から関わってくるため、そのころには決めておきたい。
ODMメーカーは、製品仕様書ができる段階では決めておきたい。ODMメーカーの選択に関しては、技術的な得意分野の調査や事前のコスト見積もりが必要だ。さらに、頻繁に訪問しやすい立地であるか、お互いの人の相性など事前の調査は多い。これは以降の連載の中で説明する。
試験機関は混んでいる試験設備もあるので、試験実施の1カ月前には決めておきたい。また、試験装置の借用や試験の依頼の予約は早めに行いたい。
量産部品メーカーは、最初の試作データで量産部品コストの相見積もりを取得する必要があるため、最初の試作部品の設計データが完成するころには、2〜3社を選定しておきたい。
認証取得機関には、生産前の最後の試作セットを提出して検査をしてもらうが、その1回だけでの検査では不合格になる可能性が高い。よって、最初の試作セットができた段階から確認してもらいつつ、設計を進めるのがよい。そのため、最初の試作セットが組み上がる段階までに決めておきたい。
製品化の専門家に相談して、ODMメーカーや設計者を探す
例えば、樹脂の板材2〜3部品を接着するだけの簡単な設計のアイデア雑貨を100個程度作りたいのなら、樹脂の試作部品メーカーに依頼すれば簡単な設計から生産まで対応してもらえる。つまり、樹脂の試作部品メーカーだけで完結する。
しかし、これを数万個以上作りたいのなら、樹脂の量産部品メーカー(射出成形メーカーという)に依頼して、金型を作製し、部品を作る方が安価になる可能性がある。この場合、製品と部品の設計は別個に依頼しなければならない。製品の組み立ても簡単であれば、部品メーカーで組み立ててもらえることもあるが、部品点数が多ければ専門の組み立てメーカーに依頼する。
ギアなどがあり、駆動する部品が必要であれば駆動系の設計者が必要になり、それを電気で動かすなら、電気設計者と基板メーカーが関係してくる。また、電気製品には認証取得が必要な場合もあるので、認証取得機関も関わってくる。製品にレンズがあれば光学設計者が必要になり、Wi-FiやBluetoothがあれば無線通信の設計者、音楽が鳴れば音響の設計者が必要になる。
このように、これから製品化しようとする製品のカテゴリーやその生産数によって、適切なODMメーカーや設計者、そして協力メーカーは異なってくる。ODMメーカーや設計者といっても、どんな製品でも作れるわけではないため、ビジネスとして製品化を始めることを決心し、おぼろげな製品のイメージを固めた段階で、製品化設計の専門家に相談することをお勧めする。自力で製品化を進めた結果、国からの補助金約600万円を無駄にしてしまったり、2〜3年の期間を浪費してしまったりする企業が現実に多くあるのだ。 (次回へ続く)
筆者プロフィール
オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)
上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。
◆ロジカル・エンジニアリング Webサイト ⇒ https://roji.global/
◆著書
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