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製造業の仕組みとODM(設計製造委託)【後編】ODMを活用した製品化で失敗しないためには(2)(1/2 ページ)

社内に設計者がいないスタートアップや部品メーカーなどがオリジナル製品の製品化を目指す際、ODM(設計製造委託)を行うケースがみられる。だが、製造業の仕組みを理解していないと、ODMを活用した製品化はうまくいかない。連載「ODMを活用した製品化で失敗しないためには」では、ODMによる製品化のポイントを詳しく解説する。第2回のテーマは、前回に引き続き「製造業の仕組みとODM」だ。

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 前回に引き続き、「製造業の仕組みとODM(設計製造委託)」をテーマに解説する。

⇒ 連載バックナンバーはこちら

製造業の業態トレンド〜マッチング企業

 初めて製品化を行う設計メーカーが、部品メーカーと直接接するのはハードルが高い。例えば、板金部品メーカーを探すには、インターネットで「板金部品」などと検索すればたくさん見つかる。だが、初めて部品を作る人が企業のWebサイトを見ても、自分の部品を作ってもらえるのか、提出する設計データは問題ないか、技術的な会話はできるのか……など、分からないことも多く不安に感じるはずだ。

 このような場合に、設計メーカーと部品メーカーの間に入るマッチング企業がある。彼らは、部品発注の初心者であっても安心して部品を作製できるような仕組みを構築している。インターネットで「部品作製 紹介」などと検索すれば、たくさん見つかるはずだ。マッチング企業は、部品メーカーを紹介したり、部品の商流や物流の間に入ったりし、紹介/仲介手数料を取る。最近は、普通の部品メーカーでも初心者に対して懇切丁寧に対応してくれるところも多い。

マッチング企業
図1 マッチング企業[クリックで拡大]

製造業の業態トレンド〜ODM企業

 家電製品の組み立て作業は2010年を過ぎたころから、日本から中国をはじめとするアジア圏の国々へと移管された。製品のコスト競争が激しくなり、設計メーカーが製品の組み立てに安い労働力を求めたからである。組み立てメーカーは輸送費の安い近郊の部品メーカーから部品を購入するため、日本の量産部品メーカーからは仕事が奪われるとになった。そこで事業拡張のため、ODMを請け負う量産部品メーカーが出始めてきたのだ。板金部品と樹脂部品がある製品であれば、その両方の部品を作らなければならないため、複数のカテゴリーの部品メーカーが連携し、1つのODMメーカーとして機能を果たそうとし始めたのである。

 このような経緯から、部品メーカーから派生したODMメーカーが、現在多く存在している。しかし、部品メーカーにはもともと製品の設計者はおらず、また製品の組み立てを行ったことがない企業も多いため、このようなODMメーカーに設計と製造を委託する際は、どのような設計技術と量産技術を持っているかを十分に確認しなければならない。

ODMメーカーに開発は依頼できない

 ODMは“設計生産委託”である。つまり、ODMメーカーは基本的に開発を行わない。この説明の前に、まず【開発】とは何かを【研究】の意味と併せて解説する。

 ここでは、人工筋肉を用いた重量物可搬スーツの製品化を例に考える。

【研究】スパゲティの麺のような形状をした材料に関して、いろいろな成分の選択と組み合わせを行い、また含有比率をいろいろと調整したところ、電気を流すと麺が長さ方向に縮む材料になった。

【開発】研究で得られた材料をある太さにし、ある本数で束ね、ある電圧をかけたら、人間の腕の筋肉と同じ程度の力を生み出すことができた。そして、材料の太さ/本数/電圧と力の相関データを取った。

【設計】重量物可搬スーツとして必要な力を得られるように、この材料の太さ/本数/電圧を相関データから算出し、人工筋肉を作製した。そして、これと他の部品を組み合わせて人体に装着できる重量物可搬スーツを設計し、製品化した。

 設計者が行うのは【設計】の部分だ。筆者もこの部分の設計者である。しかし、製品化を目指す人の中には、開発段階であるにもかかわらず、ODMメーカーに設計を依頼してしまう場合が多くあり、ODMメーカーにとってハードルが高いものとなる。その理由は、技術的に本当に製品になるのかまだ確認できていない段階で設計を依頼されるからだ。

 このような場合、設計とは別の依頼としてODMメーカーに開発を依頼するか、自分で開発するしかない。例えば、大学の研究室と連携して製品化をチャレンジする企業は、研究室で開発を終えてからODMメーカーに設計を依頼すべきだ。開発と設計の境界線は明確ではないが、ODMメーカーと日程と費用を相談しながら進めるとよいだろう。

サービス(異常や修理対応)について

 製品は必ず壊れたり、異常が発生したりする。その原因は設計の問題であったり、部品不良や組み立て不良(製造不良)の問題であったり、あるいはユーザーの過度もしくは異常な使い方の問題であったりする。しかし、設計メーカーはいずれの場合もユーザーから問い合わせがあれば、それに対応しなければならず、ときには修理も必要となる。これは生産が開始された直後から始まり、設計メーカーには不可欠な仕事だ。

 サービスに必要な主な業務は以下の通りだ。

(1)サービス部品の選定(交換できる部品を決める)
(2)ユーザー問い合わせ窓口の設置
(3)サービス部品の生産と在庫
(4)原因解析とデータ蓄積
(5)修理の方法を決める

 基本的に、ODMメーカーはサービスを行わない。しかし、設計メーカーから依頼があれば、単発で行うこともある。上記の(1)(2)は設計メーカーの仕事だ。(3)(4)は必要なときに単発でODMメーカーに依頼する。(5)はODMメーカーに協力してもらいながら、設計メーカーが決める。

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