アルプスアルパインがパワーインダクター事業を売却、台湾デルタグループに:組み込み開発ニュース
アルプスアルパインは、独自の磁性材料「リカロイ」を特徴とするパワーインダクター事業を、台湾Delta Electronicsグループ(デルタグループ)に7100万米ドル(約103億円)で売却する。
アルプスアルパインは2024年8月29日、独自の磁性材料「リカロイ」を特徴とするパワーインダクター事業を、台湾Delta Electronicsグループ(デルタグループ)に譲渡すると発表した。日本国内と韓国にあるパワーインダクターと磁性材料の事業に関わる生産および研究開発設備、特許、知的財産などをデルタグループの日本法人であるデルタ電子を通じて7100万米ドル(約103億円)で売却する。
同日にアルプスアルパインとデルタ電子との間で事業譲渡の最終契約書を締結した。正式な事業譲渡契約は2024年9月下旬に締結し、2025年1月初旬に事業譲渡される予定だ。
アルプスアルパインのパワーインダクター事業の中核技術であるアモルファス合金のリカロイは、低鉄損、高い飽和磁束密度、粉末化の容易さ、高温下でも特性が安定という4つの特性を持つ。同事業の2024年度の売上高は29億8800万円、営業利益は2億7400万円。アルプスアルパイン連結業績全体に対する構成比率としては売上高で0.3%、営業利益で1.4%とそれほど大きくない。
一方、同社は2027年度(2028年3月期)までにPBR(株価純資産倍率)1倍以上を達成目標とする中で注力事業と非注力事業の選別を行っている。その中で、パワーインダクター事業について、固有の磁性技術をベースとして特定市場での地位を確保しているものの、パワーインダクター市場は競合他社が多く存在しており、自社の保有する技術だけでは今後将来的にグローバル市場全体の成長を取り込むことは困難だと判断し、非注力事業に位置付けていた。また、中長期的な方向性で、同社の他技術や製品とのシナジーが弱く、新たなパートナーの下で固有磁性技術の最大限の活用を図り成長機会を最大化させるべきだと判断し、譲渡先を選定することになったという。
譲渡先の選定に当たっては、今後大きく拡大が期待されるデータセンター需要への事業取り組みにおいて、アルプスアルパインとの事業取引が多く、かつ長期にわたって信頼関係を構築しており、電源関連製品において業界をリードするデルタグループこそが最適と考えた。デルタグループがリカロイの固有性能に着目していたことも決め手となった。
アルプスアルパインは、パワーインダクター事業の譲渡で得た資金を電子部品分野における注力強化領域などに投下し、2027年度のPBR1倍以上などの経営目標の達成を目指す。一方、デルタグループは、日本と韓国におけるアルプスアルパインのパワーインダクター事業を統合するとともに、同事業の研究開発能力、生産設備、顧客基盤を組み合わせて、データセンター、AI(人工知能)ハイパフォーマンスコンピューティング、エッジコンピューティング、電気自動車、スマートフォン、次世代ICT製品などへの受動部品の供給能力を強化していく方針である。
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