検索
インタビュー

全ての答えは品質に、OKIは“基板”を通して社会の“基盤”を作る進化するOTCのモノづくり

高機能プリント配線板を設計、開発、製造するOKIサーキットテクノロジーが鶴岡事業所、上越事業所に相次いで設備増強を行い、次の成長に向けた準備を行っている。2024年4月に同社の代表取締役社長に就任した鈴木正也氏に意気込みを聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 OKIグループで高機能プリント配線板を設計、開発、製造するOKIサーキットテクノロジーでは、生産拠点である鶴岡事業所(山形県鶴岡市)、上越事業所(新潟県上越市)に相次いで設備増強を行い、次の成長に向けた準備を行っている。2024年4月に同社の代表取締役社長に就任した鈴木正也氏に意気込みを聞いた。

品質の追求を通してブランドを築く

MONOist 現在の市場環境について教えてください。

鈴木氏 コロナ禍で半導体が足りなくなり、その後、各メーカーが半導体を抱え込んだ。それがはけない状況が続き、プリント配線板の発注にまでまだ大きな流れが来ていない。半導体不足は全業種で起きたため、問題は長く尾を引いている。

 今、半導体の波がいったん収まっている中で、各地で半導体工場の建設が続いている。われわれが生産している半導体テスト基板の市場が動き出せば、一気に市場全体が動くのではないか。

MONOist 社長就任後の思いとは。

鈴木氏 OKIサーキットテクノロジーはOKIプリンテッドサーキットや、田中貴金属工業、日本アビオニクスら複数の会社の事業が1つになって今に至っている。基板という重要な製品を作るに当たって、従業員一人一人のしっかりとした熱意、思いを感じている。

 それぞれの従業員が持っている「世界へ」「宇宙へ」という思いをしっかりと私が下支えし、そういった企業価値、ブランドを作れるように会社をけん引していくことが私の役割だと思っている。

 2026年の経営統合5周年に向けて、会社の体制も含めて1つのOKIサーキットテクノロジーという形にしていきたい。例えば作業員のユニフォームにしてもまだ統一されていない。みんなの思いを1つにしていきたい。

MONOist どのようにブランドを築いていきますか。

鈴木氏 品質の追求によって、ブランドをしっかりと作っていく。なぜ品質かと言うと、品質はモノづくりに関わる全ての答えにつながっているからだ。

 われわれが目指しているのは高多層、高精細、高信頼性の3つだ。品質が良くなれば、納期やサービスが良くなり、コスト競争力も出てくる。ユーザーの信頼の貯蓄もできる。そういった意味で、OKIサーキットテクノロジーがブランドを築くに当たっては品質で筋を通していく。

鈴木氏 それは工場の品質だけではない。われわれには工場があり、営業部門、技術部門、管理部門がある。

 品質は集合体だ。技術ならCAD/CAMなどの設計品質を上流で高める。ユーザーの仕様をそしゃくして確実にモノづくりのプロセスに落とし込まなければならない。工場なら、モノづくりに落とし込まれた各工程の品質を高めていく。営業ならユーザーの表面的なニーズだけでなく、さらに深いところまで把握していく。

 管理部門の企画系なら、企画は会社の経営でもあるため、事業環境や技術動向をしっかりと捉え、経営資料の精度を上げていくことが品質につながる。このように、それぞれの部門で品質を高めてブランドを作っていくことを掲げている。


OKIサーキットテクノロジーの鈴木氏。同社のプリント配線板はJAXAのロケットにも使われている[クリックで拡大]

MONOist OKIで生産技術に長く携われてきた鈴木氏から見た、今のモノづくりにおける課題とは。

鈴木氏 モノづくり全体の見える化であり、その基本となるのは表(おもて)化、無駄取り、標準化の3つだ。まずは工場でそれらを進め、そこに対してスマート工場の思想を入れてDX(デジタルトランスフォーメーション)を行い、最高のQCDを求めていく。それが一番の課題だ。

 各工程に断点がなく、スムーズに全てつながればロスなく工場は動いていくが、レイアウトや部品供給などのさまざまな要素で断点が生まれてしまう。それらの要素を表に出し、そもそも必要かどうかを見極めて無駄取りし、一番無駄がなくなった状態を標準化する。そのおもて化、無駄取り、標準化のサイクルを早く回し、IoT(モノのインターネット)などに置き換えることができれば強いモノづくりが実現する。

MONOist 今後に向けた抱負を聞かせてください。

鈴木氏 われわれの高機能プリント配線板への要求は本当に難しくなってきている。ICは小型薄型化が進む一方で、プリント配線板は回路が微細化しつつも多層化して厚くなっている。そうしなければ半導体の回路が引ききれない。ドリルやめっき、積層といった、どちらかといえば古い技術をどんどん突き詰めていっているので品質が難しい。

 そのため生産性を求めつつも、しっかりと品質を念頭に置いて、少し時間をかけてでも精度のいいモノを作った方が圧倒的に歩留まりも高まるし、総合的な生産性は上がる。

 われわれが作っているのはプリント“基板”ではあるが、それは“基盤”でもあり、社会の土台作りを担っている。土台を1つ1つ丁寧に作り上げていくことで事業が発展していく。

⇒その他の「FAインタビュー」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る