あの衛星やロケットも? 日本の宇宙開発を支えるOTCのプリント配線板技術:メイドインジャパンの現場力(16)(1/3 ページ)
プリント配線板の設計、製造、販売を行うOKIサーキットテクノロジーは、プリント配線板において、JAXA認定を全項目で取得。高い技術力と信頼性で、日本の宇宙開発事業を支えている。
宇宙開発ビジネスが大きな注目を集めている。最近では民間企業の進出なども進み、取り組みの幅が広がっている。しかし、宇宙空間で使用する機材は「メンテナンスができない」や「放射線対策が必要」など、地上で使うものとは一線を画す信頼性や技術力が必要になる。
その中で、2018年3月にプリント配線板のJAXA(宇宙航空研究開発機構)認定を全項目で取得し、日本の宇宙開発事業向けプリント配線板で大きな存在感を示すのが、山形県鶴岡市にあるOKIサーキットテクノロジーである。高い技術力と信頼性で日本の宇宙開発ビジネスを支えるOKIサーキットテクノロジーの生産技術について探る。
航空宇宙領域の比率を拡大
OKIサーキットテクノロジー(以下、OTC)は、もともと田中貴金属工業とパイロットインキが1970年に設立した合弁会社のパイロットケミカルが前身。その後2012年に田中貴金属工業からOKIに事業譲渡され、OKIの100%子会社として再出発した。
OTCはプリント配線板の設計、製造、販売を行っている。その中でも特に高信頼性、高精度、高機能、特殊用途などの高付加価値製品を主力としていることが特徴だ。多品種、少量生産で高品質製品をできる限り短いリードタイムで提供することを目指している。独自技術の開発も進めており、発熱部に銅コインを埋め込み、放熱を効率よく行う銅コイン配線板やフレックスリジッド構造への対応、大電流や高電圧に対する放熱対応特殊構造などのさまざまな技術を顧客にニーズに合わせて開発している。
そのため、通信機器や制御機器、放送機器、半導体テスター、計測機器、インフラ関連機器などのニッチな領域でよく利用されているが、ここ最近の注力領域と位置付けているのが航空宇宙分野である。OTCは順調に年率2桁以上の成長を続けてきているが、顧客事業別の売上高比率を見ると、2015年は航空宇宙領域が7%だったのに対し、2017年は12%に拡大。2019年にはさらに23%まで拡大する計画を示している。
その大きな原動力となるのが、2017年の日本アビオニクスからの宇宙事業の事業移管である。発表後、2018年3月までに移管作業を推進してきたが、ただ、この事業移管は一筋縄ではいかなかったという。
OTC 代表取締役社長の西村浩氏は「OTCでは2001年からJAXA認定を取得していたが、プリント配線板のJAXA認定には付則が7つ用意されており、従来取得できていたのは2つだけだった。ただ日本アビオニクスの宇宙関連事業では他の付則の認定も受けており、事業移管を実現するには、新たに全付則での認定への拡張が必要だった」と述べる。
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