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3年間で累積480時間を削減へ、少量多品種工場でいかにスマート化を進めたかスマート工場最前線(1/4 ページ)

多品種少量生産型で古い設備の工場をどのようにスマート化するか――。こうした課題に取り組み、成果を残しつつあるのが高性能のプリント配線板の設計・製造を行う山形県鶴岡市のOKIサーキットテクノロジーである。同社における自動化とスマート化の取り組みを追う。

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 労働人口が減少する中「人手不足の問題にどう立ち向かうのか」は、国内工場での共通の課題だといえる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応なども含め、こうした状況に対応するために、自動化やスマート化を進める動きが加速しているわけだが、国内に残る工場は、多品種少量ニーズに応えるものである場合が多く、自動化やスマート化を進めるのも難しいという状況がある。

 多品種少量生産型で古い設備の工場をどのようにスマート化するか――。こうした課題に取り組み、成果を残しつつあるのが高性能のプリント配線板の設計・製造を行う山形県鶴岡市のOKIサーキットテクノロジー(以下、OTC)である。同社における自動化とスマート化の取り組みを追う。

社会インフラや航空宇宙分野など高付加価値プリント配線板が主力

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OKIサーキットテクノロジー本社の外観 出典:OKI

 OTCは田中貴金属工業とパイロットインキが1970年に設立した合弁会社のパイロットケミカルが前身で、2012年に田中貴金属工業からOKIに事業譲渡され、OKIの100%子会社となっている。2020年10月19日にはOKIグループ内でプリント配線板を扱うOKIプリンテッドサーキットと合併し、高付加価値プリント配線板市場の中で存在感を高めている。

 OTCで製造するプリント配線板は、高信頼性、高精度、高機能、特殊用途などの高付加価値製品が中心である。通信機器や制御機器、放送機器、半導体テスター、計測機器、インフラ関連機器、航空宇宙関連機器など向けのプリント配線板を主力としている。OKIサーキットテクノロジー 代表取締役社長の西村浩氏は「プリント配線板の国内市場は減少傾向にあるが高機能分野だけを見ると減少していない。小ロットで高い難易度の製品を取り扱えることが強みとなっている」と語る。

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OKIサーキットテクノロジー 代表取締役社長の西村浩氏

 ただ、プリント配線板市場全体が減少していることから、競合企業では撤退や縮小を進めるところも増えている。担い手が少なくなることから「シェアを高めながら新規市場の開拓などを進めて成長を続けていく」(西村氏)。

 成長を続けようとする中で、課題になっているのが生産能力である。参入企業が少なくなり顧客の要望に応えられる工場も減っているため、工場の生産能力の拡大がさまざまな分野で求められている状況だという。「OTCのプリント配線板は、小ロット製品が中心で20枚以下の生産枚数のものが約8割を占める。しかし、生産能力を増やすために人を採用しようとしても、OTC周辺には工場も多く難しい状況が生まれていた。既存の人員で持続的に生産能力を高めていくには、自動化領域を広げていくしかなかった」と西村氏は課題感について語っている。

製造、設計、営業の各部門で自動化プロジェクトを推進

 そこで2019年に専門チームを用意し、自動化プロジェクトを発足した。2020年度(2021年3月期)からは検討してきた取り組みを、本格的に工場内で実装し始めている。自動化プロジェクトでは、製造から設計、営業までそれぞれの部門での自動化を推進する。

 営業部門ではRPA(Robotic Process Automation)を導入し、顧客からの手配情報を販売管理システムに自動登録するようにする。また、設計部門では、製造工程設計の自動化や、自動判定プログラムの内製化を進める。製造部門では、古い設備のデジタル化や自動化、製造搬送の自動化、設備への製品データ入力の自動化を行う。

 西村氏は「大量生産ではあれば自動化やスマート化は進めやすいが、OTCでは高付加価値基板を取り扱うために1枚のみの注文などにも対応しており、その点で自動化についても難しさがあった。さまざまな加工を何度も繰り返す必要があるため工程ごとにバッチ処理を行っているものも多く、建屋が古いためにレイアウト的な難しさもあった。こうした難しさがあったために約3年前にも取り組みを開始したが、その時は進まなかった。そこで専門組織を新たに立ち上げて進めることにした」と振り返る。

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