3年間で累積480時間を削減へ、少量多品種工場でいかにスマート化を進めたか:スマート工場最前線(2/4 ページ)
多品種少量生産型で古い設備の工場をどのようにスマート化するか――。こうした課題に取り組み、成果を残しつつあるのが高性能のプリント配線板の設計・製造を行う山形県鶴岡市のOKIサーキットテクノロジーである。同社における自動化とスマート化の取り組みを追う。
2022年度までに20%の省人化を目指す
プロジェクトチームは専属3人、兼務5人の8人編成で、2022年度までに全社で20%の省人化を目指している。
プロジェクトを担当するOTC 技術本部 自動化推進プロジェクトチーム チームマネージャーの佐藤和昭氏は「全社で毎年5%の売上高成長と利益率10%を目標として掲げているが、これを今後も持続していくためには製造能力の増強が必要だ。現在もキャパシティー的には限界となっており残業で補っている状況が続いている。今後の成長を考えると増員が必須となるが、近隣で新たな人材を確保し続けていくことは難しく、現在の人員数で成長するには自動化による必要人員の抑制が必要だった。3年間で20%の省人化を目標とし、具体的に480時間の作業時間削減をターゲットとして取り組みを進めている」と目標について語っている。
これらの目標を3カ年計画に落とし込み、各年で目標削減時間のターゲットを設定した。2020年度は134時間の削減を目指しているという。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で活動が行えずに現状までのところでは計画に対して遅れているが、下期で巻き返す計画だ。工場内に自動化プロジェクトの進捗を貼り出し、どこでどういうプロジェクトが行われているのかということや活動工程表などを示している。少量多品種生産となるので、どうしても自動化についても個別の小さな改善がカギを握る。今は23件で実際に実装を進めているところだ」と佐藤氏は語っている。
特に設計と製造の自動化に向けては具体的に「4本の柱」を位置付け、この方向性に沿って改善を進めているという。
- 設備の改善:人手作業の機械化による省力化、生産性や品質向上
- 動線の改善:製品搬送の自動化
- 製品データ入力の自動化:手作業の入力作業の削減
- 製造工程設計の自動化:自動判定プログラムにより確認作業低減
積層ホットプレスの稼働データをデジタル化し自動収集
ここからは既に自動化の実装を進めているいくつか事例を見てみよう。まずは積層ホットプレス成形機の品質記録のデジタル化である。プリント配線版は積層構造をプレス成形する工程があり、OTCではその専用機を数多く活用している。ただ、これらの装置は古いため、品質などのログデータをアナログでチャート紙に記録するタイプだった。これを記録部分だけデジタル対応のモノに変え、これらのデータを集約するゲートウェイを設置することで、デジタルデータを自動で収集できるようにした。
もともとはアナログデータを収集して手作業で集計する状態でデータ活用そのものの負担が大きくそれほど活用できているとはいいがたい状況だった。しかし、デジタル化により記録データに必要な情報をひも付けして自動でサーバに保管でき、人手の負担を軽減できることに加えて、リアルタイムで抜け漏れのないデータが記録できるようになった。分析などもいつでもどこでも可能となった。佐藤氏は「誰がどこでいつ作ったのかというのが、いつでもどこでも把握することができるようになった。最終的には稼働データから自動判別をして異常発報などが行えるようなシステムに高度化していきたい」と語っている。
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