「価格転嫁OK」いすゞ自動車やパナソニック コネクトらが中小企業調査で最高評価:製造マネジメントニュース
経済産業省 中小企業庁は、受注側中小企業の立場で価格交渉のしやすさや価格転嫁の現状についての評価を公開し、いすゞ自動車や小松製作所、住友電装、パナソニック コネクトなど13社が「価格交渉」「価格転嫁」においてどちらも最高評価となった。
経済産業省 中小企業庁(以下、中小企業庁)は2024年8月2日、受注側中小企業の立場で価格交渉のしやすさや価格転嫁の現状についての調査結果を公開し、いすゞ自動車や小松製作所(コマツ)、住友電装、パナソニック コネクトなど13社が「価格交渉」「価格転嫁」においてどちらも最高評価となった。
中小企業が正しい価格転嫁を行ってもらえるような環境を整備
中小企業庁では、中小企業が適切に価格交渉や価格転嫁を行える環境整備のために毎年3月と9月を「価格交渉促進月間」と設定し、価格交渉と価格転嫁についての広報や講習会などを実施している。その成果を確認するために、価格交渉と価格転嫁の対応状況について、対象月に中小企業からアンケート調査と下請けGメンによるヒアリングを実施している。
2024年8月2日に公開されたのは、2024年3月に行われた価格交渉促進月間におけるフォローアップ調査で、10社以上の受注側中小企業から「主要な取引先」として挙げられた発注側企業290社について、「回答企業数」(中小企業から主要な取引先企業だと指定された数)、受注側中小企業からの「価格交渉に対する回答状況」「価格転嫁に対する回答状況」について整理してリスト化したものだ。「価格交渉」と「価格転換」の回答状況については、受注側中小企業が発注側の対応について評価して点数化している。これにより、発注側企業の自発的な取引改善を目的としている。
「価格交渉」についての点数はまず「交渉が行われたかどうか」がポイントとなり、「行われた」場合は、発注企業から「申し入れがあった」場合は10点、「申し入れがなかった」場合は8点とする。
一方、最終的に「価格交渉が行われなかった」場合では、「申し入れがあった」事案でも「コストが上昇せず、交渉は不要と判断し、申し入れを(受注側中小企業が)辞退した」ケースと「コストが上昇したが、交渉は不要と判断し、申し入れを(受注側中小企業が)辞退した」ケースは10点とされるが、「コストが上昇したが、発注量減少や取引停止を恐れ、申し入れを辞退した」ケースは5点と判断されている。
さらに「申し入れがなかった」事案では「コストが上昇したが、発注量減少や取引停止を恐れ、交渉を申し出なかった」ケースは−5点、「コストが上昇し、交渉を申し出たが、応じてもらえなかった」ケースは−10点と厳しい評価となっている。
「価格転嫁」については、そのまま「1割転嫁」で1点、「2割転嫁」で2点と設定され、費用が上昇している中で減額された場合は−3点という基準が設定されている。
この2つの点数の平均値を以下のような形で分類し、対象企業をリスト化した。
- ア:回答の平均が7点以上
- イ:回答の平均が7点未満、4点以上
- ウ:回答の平均が4点未満、0点以上
- エ:回答の平均が0点未満
いすゞ自動車や小松製作所、パナソニック コネクトなどが最高評価
その結果、「価格交渉」「価格転嫁」においてどちらも最高となる「ア」の評価を受けた企業は、鹿島道路、小松製作所、日本工営、応用地質、デンカ、パナソニック コネクト、日立造船、KOKUSAI ELECTRIC、オリエンタルコンサルタンツ、いすゞ自動車、淀川ヒューテック、朝日航洋、住友電装の13社となった。
「ア」は平均点7点以上であるため、「価格交渉」については基本的に受注側中小企業が要求した場合は全て応じているということになる。また「価格転嫁」においては、コスト上昇分の7割以上に応じているということになる。
一方、「価格交渉」に対する評価が「エ」となったのは、エディオン、一条工務店、タマホームの3社となった。「エ」は回答の平均点数が0点未満であるため、取引をしている中小企業がこの3社に対し、「コストが上昇したが、発注量減少や取引停止を恐れ、交渉を申し出なかった」か「コストが上昇し、交渉を申し出たが、応じてもらえなかった」と感じているということを示している。3社とも「価格転嫁」については、「ウ」という評価となっており、価格据え置きか、3割までの価格転嫁には応じていることになる。ただ、今回の調査では価格転嫁において「エ」の評価はなかったため、こちらも最低評価となっている。
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