「価格転嫁は許さない」中小企業との価格交渉で積水化学とトーエネックが最低評価:製造マネジメントニュース
経済産業省 中小企業庁は、受注側中小企業の立場で価格交渉のしやすさや価格転嫁の現状についての評価を公開し、積水化学工業とトーエネックが価格交渉のしやすさについて最低評価となった。
経済産業省 中小企業庁(以下、中小企業庁)は2023年8月29日、中小企業が原材料費やエネルギー価格、労務費などの上昇分を、発注側企業に適切に価格転嫁をしやすい環境を整備するために毎年3月と9月に実施している「価格交渉促進月間」における2023年3月分のフォローアップ調査の結果を発表。受注側中小企業の立場で価格交渉のしやすさや価格転嫁の現状についての評価を公開し、積水化学工業とトーエネックが価格交渉のしやすさについて最低評価となった。
中小企業庁では、原材料価格やエネルギー価格などが上昇する中、中小企業が適切に価格交渉や価格転嫁できる環境を整備するために2021年9月から毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と設定し、対象月では価格交渉と価格転嫁についての広報や講習会などを実施。成果を確認するために、価格交渉と価格転嫁の2つの点において、中小企業からアンケート調査と下請けGメンによるヒアリングを実施している。
8月29日に公開されたのは、この調査の中で10社以上の受注側中小企業から「主要な取引先」として挙げられた発注側企業について「回答企業数」(中小企業から主要な取引先企業だと指定された数)、受注側中小企業からの「価格交渉の回答状況」「価格転嫁の回答状況」について整理してリスト化したものだ。「価格交渉」と「価格転換」の回答状況については、受注側中小企業からの回答を点数化した。
「価格交渉」では「コスト上昇分を取引価格に反映するために発注側企業に協議を申し入れ、話し合いに応じてもらえた」もしくは「コスト上昇分を取引価格に反映させるために発注側企業から協議の申し入れがあった」場合が10点で「コストが上昇していないために協議を申し入れなかった」が5点、「コストは上昇しているが自社で吸収可能と判断し、協議を申し入れなかった」が0点と設定されている。一方でマイナス点と設定されているのが「発注側企業から協議の声掛けがあったが、発注量の減少や取引中止を恐れ、協議を申し入れなかった」(−3点)、「発注側企業から協議の声掛けがなく発注量の減少や取引中止を恐れ、協議を申し入れなかった」(−5点)、「発注企業に協議を申し入れたが応じてもらえなかった」(−7点)、「取引価格を減額するために、発注側企業から協議申し入れがあった。もしくは協議の余地なく一方的に取引価格を減額された」(−10点)など「価格交渉を言い出しにくい関係性」というだけでマイナス評価となっていることが特徴だ。
「価格転嫁」については、そのまま「1割転嫁」で1点、「2割転嫁」で2点と設定され、費用が上昇している中で減額された場合は−3点が設定された。
この2つの点数の平均値を以下のような形で分類し、対象企業をリスト化した。
- ア:回答の平均が7点以上
- イ:回答の平均が7点未満4点以上
- ウ:回答の平均が4点未満0点以上
- エ:回答の平均が0点未満
その結果、価格交渉に対する点数が「エ」となったのは、積水化学工業とトーエネックの2社となった。エは回答の平均が0点未満であるため、中小企業側では何らかの影響が出ているのに協議を申し入れにくい関係を作っているか、もしくは協議があっても断っているという状況だといえる。両社とも価格転嫁の状況については「ウ」という評価となっており、0〜3割までの価格転嫁は行っていることになるが、今回の調査では価格転嫁についてエとなった企業はいなかったため、こちらも最低評価となっている。ちなみに、積水化学工業を主要取引先として調査に回答した中小企業は12社、トーエネックは11社となっている。
一方で、価格交渉、価格転嫁の両方で最高となる「ア」の評価となった企業は、東芝と旭化成、出光興産、レゾナックとなっている。
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