DMG森精機が機械ではなくサービスエンジニアのシェアに力を入れる理由とは:2024年度上半期決算(2/2 ページ)
DMG森精機は2024年度上半期(2024年1〜6月期)の決算を発表した。
世界のどこでも一番にかけつけるエンジニア体制へ
DMG森精機が進める、工程集約、自動化を通してGX(グリーントランスフォーメーション)を実現するMX(マシニングトランスフォーメーション)に向けた取り組みも紹介した。同社によれば全世界に500万台の工作機械があり、そのうち稼働20年以上の工作機械は150万台あるという。
「われわれの工程集約機は5台の機械を1台にできる。この500万台を100万台にしていく。これによってエネルギー消費や必要なオペレーターの数が減り、中間在庫や仕掛り品もなくなる。ただ、100万台を作るには少なくとも30年くらいかかる。MXとは短期的な取り組みではない」。工程集約、自動化ラインの事例としてHME(三重県桑名市)を紹介した。
サービスエンジニアの確保にも力を入れている。上半期だけでグローバルで300人、日本でも40人ほど増員しており、2028年までにさらに700〜800人増やしてグローバルで約3000人の体制にするとしている。「これによって、世界で1番先にわれわれのサービスエンジニアがユーザーの元に到達して修理するようになる。そうすれば機械の稼働率が上がり、リピートオーダーの可能性も高まる」。
人員に余裕が出てくれば、サービスエンジニアのトレーニングに時間を割けるようになる。「少ない人数でサービスを提供していると、常時現場に行く必要があり、疲弊してしまう。だが、ある程度の人数になると、100人のうち常時10〜20人は工場に送ってトレーニングできる。今、日本のエンジニアをドイツに送ったり、ドイツのエンジニアが日本に来たりしていて、このサイクルが回り出した」。
さらに森氏はサービスエンジニアの充足に力を入れる理由を次のように語った。「機械のシェアを競う前に、サービスエンジニアのシェアをトップにしようと考えている。例えば人口が数百万人の国で工作機械のサービスができるエンジニアはせいぜい数十人だ。そのうちの10人、20人をわれわれの傘下に入れれば、それだけで修理のマーケットシェアは20%、30%取れる。サービスの質を圧倒的にする。これによってリピートオーダーや他社機からの切り替えを強固にしていく」。
一方で若者の製造業離れはグローバルで進み、製造現場の人手不足は各国共通の課題になっている。
「若者だけではなく、みんな離れている。それは素材の投入や搬出というロボットで自動化できる仕事を製造業だと思っている人が多いからだ。そういう仕事をなくしていくことがわれわれの役目だ。中国でも日本でもドイツでも、年間2000時間ぐらいの労働でちゃんと給与を払い、家から自動車で2、3時間の圏内を担当してくださいとしっかり説明すれば誇りを持ってみんな喜んで働いてくれる。そういう環境を社員に提供するのが社長や本社の仕事だ。もう我慢して働くのではなく、皆が納得して腑に落ちて働かないといけない」
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