DMG森精機が通期業績見通しを上方修正、欧州や米州の需要が堅調に推移:2024年1~3月期決算
DMG森精機は2024年度第1四半期(2024年1〜3月)の決算を発表した。
DMG森精機は2024年4月26日、2024年度第1四半期(2024年1〜3月)の決算を発表し、同日、オンラインで記者会見を開いた。
第1四半期の連結受注額は前年同期比5.8%減の1368億円だった。前四半期(2023年10〜12月)と比べて13.5%増だった。地域別では欧州や米州での需要が堅調に推移した。特にドイツは過去のピーク水準を更新した。日本やアジアは横ばいだったが、中国では高付加価値機の需要が堅調だった。
DMG森精機 代表取締役社長の森雅彦氏は「中国では水や空気をハンドリングするポンプやバルブ、医療や繊維機械向けなど産業機械全般が盛り上がってきている。中国は件数は少なくても日本の2倍くらいの単価で売れている。稼働状況を見ると、日本では年間千〜千数百時間くらいしか動いていない機械が多い。稼働率を上げることが重要だ。機械が倍の時間動くようになれば、設備投資金額も随分と下がる。海外では機械を年間6000時間動かしているケースもある。例えば2000万円の機械を5台使っていたのを1台に集約すれば、オペレーターの人数も中間在庫も減らせる」と語る。
業種別では、航空宇宙関連、金型や医療、発電関連がけん引した。民間航空機の大型案件が寄与したという。5軸加工機と複合加工機の工程集約機が受注全体の73%を占めた。森氏は「自動車の比率は従来型自動車が7%、電気自動車(EV)が8%くらいだが、半導体や医療、航空宇宙などを増やして、自動車比率は10%ぐらいにしたい。台数があまり出ない自動車業界にはそれほど魅力はない」と話した。
サービス、補修部品の受注は前年同期比10%増の311億円で、連結受注額全体の23%を占めるに至った。受注の平均単価は7470万円(4630万ユーロ)に上った。3月末時点の受注残は2630億円だった。
「インダストリー4.0の実装がほぼ実用レベルで完了しつつある。次はデータをどう使っていくかだ。われわれは機械の状態監視に使っている。どの部品がいつどのように故障するかがだいぶ分かってきていて、それをユーザーに伝えて先回りしてメンテナンスしていく。また、デジタルツインを使って加工しながら加工物の精度予測を行い、必要なら検査を提案するなどができるようになっている。ギアを加工するソフトウェアでは、そのギアを加工する時だけ使っていただく、ソフトウェアの切り売りのようなものができるようになってきた」(森氏)
第1四半期の業績を受けて、2024年度(1〜12月)通期の業績見通しを2024年2月発表の計画から上方修正しており、売上高は5400億円から5500億円に、営業利益は570億円から585億円に、当期利益は350億円から360億円に増額した。
2024年1〜3月の売上高は前年同期比7.8%増の1368億円、営業利益は同10.9%増の108億円、営業利益率は8.1%だった。
ロシアの連結子会社だったUlyanovsk Machine Toolsが2024年2月にロシア政府に収用されたことに伴い、連結除外損失として148億円(9180万ユーロ)を計上した。ドイツ政府の海外直接投資保険として保険求償を行っているという。Ulyanovsk Machine Toolsはロシアのウクライナ侵攻を受けて2022年3月から操業を停止していた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 16種の計測機能と対話形式入力で段取り時間を短縮、補正の自動化も実現
DMG森精機は豊富な計測機能を用いて段取り時間を短縮するテクノロジーサイクル「Measuring Pro」を開発した。 - 工作機械の間をAMRが行き交う無人ライン、シチズンが見せた未来のモノづくり
シチズンマシナリーはプライベートイベント「CFA2023」を軽井沢本社で開催し、新しい精密加工工場や2024年発売予定の新機種などを公開した。 - DMG森精機子会社が奈良県にレーザースケールの生産工場新設、2025年稼働予定
マグネスケールは、新たな事業所として、奈良県にレーザースケールの生産工場を建設する。生産拠点を新設し、生産上限を拡大することで、レーザースケール需要の高まりに応える。 - 好調DMG森精機の2023年度上期決算の中身、EV/半導体/積層造形で何を語ったか
DMG森精機は2023年度上半期(2023年1〜6月)の決算について説明。売上高は前年同期比14.4%増の2495億円、営業利益は同27.5%増の226億円だった。2023年度の売上高、営業利益の見通しも上方修正した。 - 工作機械も4.0へ、シェフラーとDMG森精機が描く「マシンツール4.0」
ドイツのインダストリー4.0が大きな注目を集める中、工作機械にもIoTを積極的に活用する動きが出てきている。軸受部品を展開するシェフラーと、工作機械メーカーのDMG森精機は工作機械のインダストリー4.0対応を目指す「マシンツール4.0」プロジェクトを推進している。 - アップルVSサムスン訴訟を終わらせた日本の工作機械の力
知財専門家がアップルとサムスン電子のスマートフォンに関する知財訴訟の内容を振り返り「争う根幹に何があったのか」を探る本連載。最終回となる今回は、最終的な訴訟取り下げの遠因となった「新興国への技術移転」の問題と「なぜ米国で訴訟取り下げを行わなかったのか」という点について解説します。