次世代パワー半導体向け高熱伝導シンタリング銀ペーストのサンプル出荷を開始:材料技術
住友ベークライトは、次世代パワー半導体向け「高熱伝導シンタリング銀ペースト(150W/m・K)」のサンプル出荷を開始した。2024年12月の量産化を目指している。
住友ベークライトは2024年7月16日、次世代パワー半導体向け「高熱伝導シンタリング銀ペースト(150W/m・K)」のサンプル出荷を開始し、2024年12月の量産化を目指していると発表した。
同製品を使用することで、環境負荷が大きい鉛はんだ(鉛含有量37%)の置き換えが可能となる他、シリコン(Si)パワー半導体よりも高温での動作が見込まれるシリコンカーバイド(SiC)パワー半導体の採用を可能とし、製品の小型化や部品点数の削減に貢献する。
高熱伝導シンタリング銀ペーストの概要
高熱伝導シンタリング銀ペーストは、同社の樹脂配合技術により、高焼結促進性を兼ね備えた樹脂と銀を組み合わせたもので柔軟性に優れている。この樹脂技術により、150W/m・Kという高い放熱性を有しながら、無加圧工程での使用が可能で、接合部材へのダメージ低減やバッチ処理による時間短縮が期待される。
さらに、同製品は、硬化温度が従来のフルシンタリング材よりも低く、硬化時における材料間の線膨張係数の差によるストレスが低減される。高さの異なる複数部材への接合作業性にも優れており、はんだやフルシンタリング材の代替として、パワー半導体のチップや冷却器の接合用途に適用できる。
加えて、ナノ銀よりも安価なマイクロ銀でも高い焼結性を達成しつつ冷熱温度サイクルの耐久性で高い信頼性を担保することが可能だ。
同社は、2023年9月から同製品のサンプル提供を開始し顧客での評価を進めており、2024年12月の量産実績化を目指している。
開発の背景
近年、パワー半導体は高電力を制御するための電子デバイスとして、電気自動車(EV)などのコンバーター/インバーターの他、太陽光や風力の発電システムなど、採用分野は多岐にわたり、市場の拡大が期待されている。そのため、Siパワー半導体よりも優れた特性を持つSiCパワー半導体の需要が伸びている。
SiCパワー半導体は、高電力で使用されることが多く発熱量が高い特性があるが、SiCは熱伝導性が高い素材であり、熱を効率的に拡散することが難しいという課題がある。このため、基板とチップを接合するダイアタッチ材料には高い放熱性が求められる。
従来のダイアタッチ材料には鉛はんだが多く適用されているが、はんだは製造過程で発生する廃棄物や廃液に鉛などの有害な物質や重金属が含まれることがあり、環境負荷が大きくなる。
また、はんだの熱伝導率(25〜60W/m・K)ではSiCパワー半導体に求められる放熱性が不十分であるなどの課題がある。そこで、高熱伝導材としてシンタリング銀ペーストが注目されており、市場の拡大が期待されている。
関連記事
- 耐久性に優れるモスアイシートを開発、1000回のレンズ拭きに対応
住友ベークライトは、「CEATEC 2023」で、開発中の高耐久低反射ポリカーボネートシート、高周波拡散フィルム、メタサーフェス反射板を披露した。 - VOCが0.1%未満の超低モノマー水溶性フェノール樹脂を発売
住友ベークライトは、フェノール樹脂に含まれる残存原料であるフェノール、ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)を0.1%未満まで低減した超低モノマー水溶性フェノール樹脂の製品群の販売を開始した。 - 抗体糖鎖の自動前処理装置を発売、5〜6時間で24サンプルを前処理可能
島津製作所は、抗体医薬品の開発に役立つ抗体糖鎖自動前処理装置「MUP-3100」を、住友ベークライトは専用の抗体糖鎖調製キット「Auto-EZGlyco mAb-N Kit for SHIMADZU」を2024年7月3日に発売した。 - 住友ベークライトが生産ラインをデジタル化、NECとの共創で生産効率を20%向上
住友ベークライトは、NECとの生産技術のデジタル化に向けた共創を通じて、製造工程にAIやIoTなどの最先端技術を導入することで製造工程の自律制御を実現したと発表した。国内主力4工場の生産ラインで生産効率を20%向上したという。 - ボタン電池で動作する省電力電子調光シート、住友ベークライトが開発
住友ベークライトは、「第15回国際カーエレクトロニクス技術展」において、メモリー効果を持つとともに省電力な電子調光シートを披露した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.