なぜB2B製品にデザインが必要なのか? 競争優位性を高めるデザインの活用法:設計者のためのインダストリアルデザイン入門(11)(1/6 ページ)
製品開発に従事する設計者を対象に、インダストリアルデザインの活用メリットと実践的な活用方法を学ぶ連載。今回は、これまであまり注目されてこなかったB2B製品におけるデザインに着目し、その効果や重要性、そして競争優位性向上のためのデザイン戦略について解説する。
工業製品開発における「デザイン」というと、とりわけ家電や携帯電話などのコンシューマー製品のイメージが強い方も多いかもしれませんが、B2B製品(例えば、産業用ロボット、工作機械、自動車部品など)においてもデザインは非常に重要な要素であるとされています。
特に近年では、B2B製品においても、製品の機能や価格だけでの差別化が難しくなっています。そのため、競合との差別化を図るための戦略としてデザインを活用する企業が増えてきました。
そこで、本稿ではこれまであまり注目されてこなかったB2B製品におけるデザインに着目し、その効果や重要性、そして競争優位性向上のためのデザイン戦略について解説していきます。
この記事を通して、B2B製品開発に携わる方が、デザインの可能性を再認識し、今後の開発に役立てていただければ幸いです。
1.なぜB2B製品にデザインが必要か?
まずは、なぜ今B2B製品にデザインが必要なのか? そして、なぜこれまでデザインが軽視されてきたのか? について解説します。
- 1-1.なぜ機能や価格だけでは差別化が難しいのか?
- 1-2.顧客体験の向上が競争優位性を高める
- 1-3.デザインの活用が顧客体験を向上する
- 1-4.なぜB2B製品のデザインは軽視されるのか?
1-1.なぜ機能や価格だけでは差別化が難しいのか?
かつては、産業用機器や工作機械などをはじめとするB2B製品は、「高機能」であることや「低価格」であることがそのまま競争優位性に直結していました。しかし、技術や市場が成熟した現代においては、機能や価格だけでの差別化が困難になっています。
市場によって個別課題はあるものの、差別化が難しい要因としては以下のことが共通して挙げられます。
■B2B製品の差別化が難しい要因
- 技術のコモディティ化:各社の技術力の差が縮まり、類似した機能を持つ製品が数多く市場に出回るようになった
- グローバル競争の激化:製造原価が優位な海外企業の参入により、価格競争が激化
- 顧客ニーズの多様化:顧客のビジネスが多様化し、自社固有の課題解決に最適な製品やサービスを求めるようになった
従って、このような状況下で顧客に選ばれる製品を提供するためには、機能や価格以外の価値を訴求していくことが重要になります。
1-2.顧客体験の向上が競争優位性を高める
競争優位性の高い製品を創出するには、そもそも、製品の付加価値がどのように決まるのかを理解する必要があります。以下で、製品の付加価値を構成する3つの要素について解説します。
■製品の付加価値を構成する3つの“E”
- 技術(Engineering):製品を構成する要素技術、機能、品質など製品が顧客にもたらす機能的価値
- 経済性(Economics):製品の価格、運用コスト、ROI(投資対効果)など製品が顧客に提供する経済的価値
- 顧客体験(Experience):製品の使用感、高揚感、印象など顧客が製品と接する際に感じるあらゆる体験や情緒的価値
これら3つの要素は、それぞれが独立したものではなく、互いに影響し合い、複雑に絡み合っています。そして、3つのうち、機能やコストなどの要素を含む「技術(Engineering)」と「経済性(Economics)」での差別化が難しくなってきているのは、先述の通りです。
つまり、製品を差別化し競争優位性を高めるためには、残された一つである「顧客体験(Experience)」の向上が必要です。
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