3D Systemsが最新3Dプリンタ4機種を国内投入、樹脂から金属まで多様な造形に対応:3Dプリンタニュース
スリーディー・システムズ・ジャパンはプライベートイベント「3D Systems Manufacturing Solutions Day」を開催し、これから日本国内で投入を予定している新製品などを説明した。
スリーディー・システムズ・ジャパンは2024年6月20日、東京都内でプライベートイベント「3D Systems Manufacturing Solutions Day」を開催し、2024年に日本国内で投入を予定している新製品などを説明した。
3Dプリンタは持つべきノウハウの1つ、最終製品製作に向けたニーズも
冒頭、あいさつに立ったスリーディー・システムズ・ジャパン インダストリアルソリューショングループ セールスディレクターの並木 隆生氏は、サプライチェーンやカーボンニュートラル、少子高齢化、金型の保管など現在のモノづくりが抱える課題を挙げながら、「これらをいかに解決していくかが、持続可能性を実現する1つのカギになる」と話した。
その上で、並木氏は「3Dプリンタがこれらの全てを解決できるとは言わないが、少なくとも解決の一助になると信じて活動している。3Dプリンタに全て置き換えることはなくても、プロセスの1つとしてノウハウを持っておくべき技術ではないか。金型レス生産が実現すれば設計自由度が向上し、オンデマンド生産の環境が出来上がる。それによって、部品の軽量化などで製品性能が向上し、変種変量生産などにも対応できる」と述べ、さらにエネルギーの削減や物流の効率化、長期的かつ即時的な部品供給にもつながるとした。
また、並木氏はこれまで3Dプリンタは試作用途として広まったが、最近では機能試験や最終製品の製造に向けた3Dプリンタやその材料に対するニーズが高まっているといい、「ユーザーの理解も得ながら、一緒に解決策を探っている」と語った。
4種の新たな3Dプリンタを日本国内に投入へ
続いて製品開発責任者を務める3D Systems Vice President Technical FellowのJohnson Martin(ジョンソン・マーティン)氏が2024年に日本国内で投入予定の新製品について紹介した。
まず、「PSLA 270」はプロジェクターを搭載したSLA(光造形)方式3Dプリンタだ。「市場で高い評価を得た3Dプリンタ『Figure 4』とSLAの優位性を統合した新しいタイプの3Dプリンタとなる」(マーティン氏)。
大型のプロジェクターで面一括露光することで、レーザーより早く硬化させることができ、生産性の向上に寄与する。材料を搭載した樹脂層はキャスター付きのカートに乗っており、カートを入れ替えるだけで材料交換が可能だ。
当初は黒や白、グレー系の材料だけだが、将来的にはFigure 4で使われている全ての材料が使用可能になる予定だという。
「EXT800 Titan Pellet」は、ペレットを材料とした押し出し方式の3Dプリンタだ。「フィラメント材料の3Dプリンタに比べて材料コストを抑えられる他、より太いノズルを使用できるため高速に造形できる」(マーティン氏)。
既に発売している「EXT1270」「EXT1070」と同じ機構を採用しながら、最大造形サイズは800×600×800mmとなっており、大型ワークの造形を必要としないユーザーでも使えるサイズ感にした。
従来のペレット式の3Dプリンタの主な用途だった鋳造用の木型や真空成形用の型に加えて、義肢装具などの製作も想定しているという。
金属3Dプリンタ「DMP Flex 350 Triple」は出力500Wのレーザー3本を並列に搭載しており、特殊な照射アルゴリズムを用いた制御によって、ワークの表面に継ぎ目ができないシームレスな造形を可能にしている。
RPMユニットを交換することで最大造形サイズを変えることができ、275×275×420mmと350×350×350mmの2種類のユニットが用意されている。
非常に低い酸素濃度下で造形でき、材料の劣化などを防ぐことができるバキュームチャンバーも搭載している。
ジュエリー用ワックス3Dプリンタ「MJP300W」も国内展開を予定している。ジュエリーをロストワックス鋳造するためのワックスパターンを金型なしで出力できる。表面品質を最大化するQHDモードを活用すると、後工程の磨き工程を減らすことができ、宝飾業界のユーザーには好評だという。
DMP Flex 350 TripleおよびMJP 300Wは国内でもすでに販売している。EXT 800 Titan Pelletは2024年7〜9月頃、PSLA 270は年内に発売予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AMを実製品に活用するためには何から取り組めばいいのか
本連載では、何が金属3DプリンタによるAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるか考察する。今回は、AMを実製品に活用するには何からどのように取り組めばいいのかについて考える。 - AM実製品活用に企業はどのように取り組むべきか
本連載では、日本国内で何が金属3DプリンタによるAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるかを考察する。今回は、AMの実製品活用に投資するための企業の考え方、進め方について考える。 - AM(アディティブ・マニュファクチャリング)が実製品活用されない国内事情とは何か
新しいモノづくり工法であるAMは、国内でも試作用途では導入が進んできている一方、実製品用途となると全くと言っていいほど活用されていない。本連載では、何がAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるか考察する。 - 品質保証とは何か、その定義を改めて考える
本連載では、AMにおける品質保証と、その方法を標準化した国際規格ISO/ASTM 52920について解説する。今回は、品質保証とは何かを改めて考える。 - 品質保証システムとその前提である品質マネジメントシステムの関係とは
本連載では、AMにおける品質保証と、その方法を標準化した国際規格ISO/ASTM 52920について解説する。今回は、品質保証システムと、その基盤となる企業自体の、品質を重視する経営の仕組みについて考える。 - 自動車を例に考える工業製品の量産品質保証
本連載では、AMにおける品質保証と、その方法を標準化した国際規格ISO/ASTM 52920について解説する。今回は、自動車を例に工業製品における量産品質保証について考える。