コットンリンターCNFで強度を高めた3Dプリント材料、滑らかなテクスチャーも実現:人とくるまのテクノロジー展2024
旭化成は、コットンリンターCNFを用いた3Dプリント材料「PA/CNFコンポジットフィラメント/ペレット」と自動車外装材向けのメタクリル樹脂「デルペット ピアノブラック(PB)シリーズ 耐擦傷グレード」の開発を進めている。
旭化成は、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」(2024年5月22〜24日、パシフィコ横浜)に出展し、開発中の3Dプリント材料「PA/CNFコンポジットフィラメント/ペレット」と自動車外装材向けのメタクリル樹脂「デルペット ピアノブラック(PB)シリーズ 耐擦傷グレード」を披露した。
3Dプリンタ造形でも射出成形と同等の強度を実現
PA/CNFコンポジットフィラメント/ペレットは、ポリアミド(PA)と、綿花を採取した後の種子の表面に残る羽毛状繊維であるコットンリンターを原料とする同社の高耐熱セルロースナノファイバー(CNF)から成る3Dプリント材料だ。高耐熱CNFをフィラーに用いることで、PAへの高い補強効果と3Dプリント造形性を両立する。樹脂中に形成するコットンリンターCNFの強固なネットワーク構造により、高強度で反りの少ない造形物を実現できる。
同材料は、ナノレベルの繊維が高度に分散されているため成形物の表面は滑らかなテクスチャーとなる他、他のフィラーに比べてフィラーが小さく柔らかいため造形中のノズル摩耗を防ぎ、ノズル詰まりが発生しにくい。
旭化成の説明員は「一般的にどんな材料でも3Dプリンタで造形するより射出成形した方が高強度となる。一方、PA/CNFコンポジットフィラメント/ペレットは3Dプリンタ造形でも射出成形と同等の強度を実現できる」とコメントした。
デルペット PBシリーズは、一般の黒色アクリル樹脂に比べて外光反射が少なく、優れた漆黒性を有し、光沢度も高いため塗装レスでも意匠性の高い外観を実現している。
デルペット PBシリーズ 耐擦傷グレードは、従来のデルペットシリーズと同様に、優れた漆黒性、光沢度、耐候性を持つことに加え、耐擦傷性も改善されている。従来品と比べて、耐擦傷試験前後の明度の変化が小さく、耐擦傷性が求められるピラーガーニッシュなどの自動車部品で効果を発揮する。「デルペット PBシリーズ 耐擦傷グレードの発売は2024年度中を予定している」(旭化成の説明員)。
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