軽量化や長寿命化、電流効率の向上を実現するEV向けバッテリー部材を披露:人とくるまのテクノロジー展2024(2/2 ページ)
三菱ケミカルは、電気自動車(EV)向けのバッテリー部材として、リチウムイオン電池のセル間スペーサ「THERMINSYNX」、EV電装部品向けPBT樹脂「NOVADURAN」、EV用単層冷却配管チューブ向け樹脂「Trexprene TL」などの展開を進めている。
バスバーに使えるALSETとは?
Modicは、ポリオレフィンに極性基を導入し、異種材料との接着性を付与した材料だ。ポリアミドとポリオレフィンの異種材料で構成される多層チューブの接着層として使用できる。
Gelestは、ギャップフィラーやシーリング材、接着剤向けなど用途に応じて、熱伝導性、伸縮性、接着性などの特性を調整できる。同社では、活用事例として、冷却配管チューブとリチウムイオン電池のセルの間にGelestをギャップフィラーとして利用することでセルの放熱性を高められることを挙げている。
Kyron TEXは、熱可塑性樹脂と強化繊維から成るコンポジット材で、優れた断熱性を持つ。同素材で構成されたバッテリーカバーは、金属製のカバーと比べて40%の軽量化が図れる。熱可塑性樹脂を利用しているため、リサイクルもしやすい。
BIOpregは、植物由来の樹脂を用いたガラス繊維プリプレグで、従来の熱硬化樹脂の一部を同素材に置き換えることで性能同等のままバイオ化度を高められる。
三菱ケミカルの説明員は「Kyron TEXはロケット試験で炎の貫通はなかった。ロケット試験は、バッテリーセルの熱暴走時の状態を再現するテストで、高温/高速で噴射する炎に試料をさらす。試験条件は1200℃で、炎の噴射速度はマッハ1を超える」と語った。
ALSETは接着剤を使わずに薄い樹脂と金属のフィルムを強力にラミネートした複合材料だ。同社の説明員は「今回の展示会では、大容量の電流を導電する導体『バスバー』の用途でALSETを提案している。一般的にバッテリーセルのバスバーには銅の1枚板が使用されているが、当社では銅の1枚板より複数の金属と樹脂のフィルムをラミネートしたALSETの方が電流効率が良いと考えている。なぜなら、高周波の電気が金属を流れる際には表皮効果という現象により電気が金属の表面を流れるからだ。つまり、複数の金属フィルムをラミネートしているALSETは金属の表面を多く内包しているため、電流効率に優れる」と述べた。
会場ではこれらの部材を用いたEV向けのバッテリーの模型を展示した。「EV向けのバッテリーといってもいろんな方式があり、現状はスタンダードというものはないと認識している。そのため、どんなバッテリーの形式にも対応できる当社の部材を模型に搭載している。今回の模型では、角型と円筒形のバッテリーセルを併載した他、冷却システムは冷却水あるいは冷却液を流すケースを想定した」(同社の説明員)。
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