三菱ケミカルが柔軟性に優れるアセチルポリマーを開発、改質剤としても活用可能:材料技術
三菱ケミカルは「エヌプラス(N-Plus)2023」に出展し開発品の新規アセチルポリマーを披露した。
三菱ケミカルは、「エヌプラス(N-Plus)2023」(2023年9月13〜15日、東京ビッグサイト)内の「《N+Technology》高機能・高付加価値化の提案」に出展し、開発品の新規アセチルポリマーを披露した。
新規アセチルポリマーは、高い柔軟性とポリアミド(PA)6(6ナイロン)レベルのガスバリア性を備えており、これまでガスバリア性の付与が困難だった柔軟材料への適用が期待できる。加えて、耐溶剤性に優れ触感改質も可能なため、他ポリマーの改質剤としても使える。
現在、標準タイプ、バリア性に優れた高バリアタイプ、柔軟性が良好な柔軟タイプの3種類をラインアップしている。標準タイプの融点は135℃、ガラス転移温度は20℃、溶融樹脂の流動性を示すMFR(メルトフローレート)は35g/10min(210℃)、酸素透過度は120cc・20μm/m2・day・atm(20℃、65%RH)、曲げ弾性率は100MPaとなっている。
高バリアタイプの融点は145℃、ガラス転移温度は30℃、MFRは25g/10min(210℃)、酸素透過度は70cc・20μm/m2・day・atm(20℃、65%RH)、曲げ弾性率は600MPaだ。柔軟タイプの融点は100℃、ガラス転移温度は18℃、MFRは40g/10min(210℃)、酸素透過度は240cc・20μm/m2・day・atm(20℃、65%RH)、曲げ弾性率は10MPaとなっている。
用途としては多層チューブでの活用を想定している。新規アセチルポリマーを用いた多層チューブはポリウレタン単層チューブと比べ酸素透過度が約9分の1に抑えられている。また、他ポリマーにブレンドすることで柔軟性と耐薬品を付与するのに役立つ。
三菱ケミカルの説明員は「新規アセチルポリマーでは、対象となる製品を限定していないが、構成材料の都合で食品包装には使用できない。しかし、工業用あるいは薬品用のチューブや包装などで使い道があると考えている。現在は開発品の立ち位置でニーズを集めている。そのニーズが一定数集まったら、製品化に向けた大量生産の検討を開始する」と話す。
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