従来比3倍となる電力効率で低コストのミリ波トランシーバー技術を開発:組み込み開発ニュース
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業において、ルネサス エレクトロニクスおよび同社のアメリカ法人は、高効率で低コストのミリ波トランシーバー技術を開発した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2024年5月30日、ルネサス エレクトロニクス(ルネサス)および同社のアメリカ法人となるRenesas Electronics Americaが、高効率で低コストのミリ波トランシーバー技術を開発したと発表した。NEDOの委託事業となる「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」により開発した。
開発したトランシーバーICは、パワーアンプのアーキテクチャを見直し、効率とVSWR(電圧定在波比)特性を両立したアンプとなる。消費電力やリークの低減、イメージ除去特性を改善し、使用周波数帯とパッケージング上の課題を解決する技術を確立した。これにより、28GHz帯のミリ波トランシーバーをシリコンベースのICに集積し、アンテナとの協調設計により低消費電力かつ低コストの試作に成功した。
シミュレーションや作成した試作ICによる実証試験では、目標値を達成することを確認した。また、実使用の周波数帯域幅において、従来と同じアンテナ構成で従来比3倍となる最大18%の電力効率となった。同技術をトランシーバーICに適用すると、ミリ波帯における広い通信帯域幅と、極めて少ない遅延時間を達成できる。
ルネサスは今後、同技術を活用したトランシーバーICの製品化を進めるため、市場のニーズに応じた特性改善と最適化を検討する。これにより、AI(人工知能)やXRアプリケーション、V2Xテクノロジー、サイバーフィジカルインテグレーションなどの新技術に貢献する。
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