Armの最新民生機器向けIPセット「CSS for Client」は30%性能向上、3nmに最適化:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
Armが最新の民生機器向けプロセッサIPセットとなる「Arm CSS for Client」を発表。CPUでは「Cortex-X925」と「Cortex-A725」を新たに投入するとともに、GPUも「Immortalis-G925」に刷新し、それぞれ従来比で30%以上の性能向上を実現している。
GPUが「Unreal Engine 5」の「Lumen」に対応
GPUのImmortalisシリーズは3世代目のImmortalis-G925となり、最大コア数はTCS23の「Immortalis-G720」12コアから14コアに増えた。処理性能も3Dグラフィックスで37%、AIの推論処理で34%、レイトレーシング処理で52%向上している。同じ処理性能であれば、消費電力はTCS23と比べて30%削減が可能だ。Immortalisシリーズにおける大きなトピックとしては、ゲームをはじめとするPC向け3Dグラフィックスアプリケーションで広く利用されている「Unreal Engine 5」のグローバルイルミネーション「Lumen」が対応したことだろう。これにより、マイクロソフトが推進する「Windows on Arm」の課題となっているゲームアプリケーションの対応が進む可能性がある。
CSS for Clientと併せて発表されたArm Kleidiは、Armの民生機器向けプロセッサIPにとって最も重要なプラットフォームであるAndoridに最適化した形で、CPU上でのAIアプリケーションの処理を最適化するライブラリである。中島氏は「AndroidスマートフォンにおけるAI処理ワークロードの70%がCPU上で実施されているという調査結果もある。これは、ソフトウェアとしてのAI技術の進化速度に、アクセラレータなどのAIに対応するハードウェア技術が対応できていないため、AIアプリケーションの開発者はCPU上で動作させることを優先するからだろう。この現状に対するArmとしての回答がArm Kleidiだ」と説明する。
Arm Kleidiは、Armv8アーキテクチャの「NEON」やArmv9アーキテクチャの「SVE2」といった拡張機能によるAIの処理を最適化する。「Arm KleidiAI」ではTensoFlowやPyTorchなどのAIフレームワークが、「Arm KleidiCV」では画像処理や画像認識で広く利用されているOpenCVが対象となっている。特に、Arm KleidiCVとNEON/SVE2の組み合わせでは、OpenCVの処理性能を75%向上したという結果が得られている。
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