Armの最新民生機器向けIPセット「CSS for Client」は30%性能向上、3nmに最適化:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
Armが最新の民生機器向けプロセッサIPセットとなる「Arm CSS for Client」を発表。CPUでは「Cortex-X925」と「Cortex-A725」を新たに投入するとともに、GPUも「Immortalis-G925」に刷新し、それぞれ従来比で30%以上の性能向上を実現している。
Armは2024年5月30日、最新の民生機器向けプロセッサIPセットとなる「Arm Compute Subsystems(CSS) for Client(以下、CSS for Client)」を発表した。CPUのうちフラグシップの「Cortex-Xシリーズ」は「Cortex-X925」を、「Cortex-Aシリーズ」におけるbig.LITTLE構成のbigコアは「Cortex-A725」を新たに投入するとともに、GPUの「Immortalisシリーズ」も最新の「Immortalis-G925」に刷新し、それぞれ従来比で30%以上の性能向上を実現している。併せて投入した、ArmコアのCPU上で処理されることが多いAI(人工知能)アプリケーションに最適化したライブラリ「Arm Kleidi」では、OpenCV対応の画像処理の速度を75%向上することが可能だという。
日本法人のアームで代表取締役社長を務める横山崇幸氏は「スマートフォンやノートPCをはじめとするモバイルデバイスでAIが活用されるようになっている。モバイルデバイス上でこれらのAI処理を行う上で重要な電力効率は、ArmのDNAともいえる技術だ。今回発表するCSS for Clientは、この電力効率だけでなく、クラウドからエッジに至るまでのスケーラビリティや高い処理性能に加え、それらの要件を満たす複雑な仕様の製品を早期に市場投入可能なタイムトゥマーケットにも応えられる」と語る。
これまでの「TCS」から「CSS for Client」へ
Armは、2021年5月発表の「Arm Total Compute Solution(TCS) 21」から2023年5月発表の「TCS23」まで、スマートフォンをはじめとする民生機器向けのプロセッサIPを、CPUとGPU、システムIPをパッケージで提供してきた。今回、CSS for Clientに名称が変わったものの、基本コンセプトはこれまでのTCSとは大きく変わってはいない。
今回のCSS for Clientでは、Cortex-Aシリーズにおけるbig.LITTLE構成のLITTLEコアでTCS23から採用している「Cortex-A520」を除いてIPを刷新した。Cortex-Xシリーズで5世代目となるCortex-X925は、シングルスレッド性能は2023年発表のプレミアムAndroidスマートフォン比で36%、AI処理性能はTCS23の「Cortex-X4」比で41%向上している。さらに、Cortex-X4のL3キャッシュの容量が最大2MBだったところ3MBを選択できるようになった。
bigコアのCortex-A725もTCS23の「Cortex-A720」比で性能効率が35%向上している。さらに、TCS23と同じCortex-A520についても電力効率が15%向上した。これは、CSS for Clientが最先端の3nmプロセスに最適化しているためで、Cortex-A520の電力効率もそのメリットを享受しているというわけだ。「3nmプロセスについては、TSMCとサムスンの両方に対応している」(アーム 応用技術部ディレクターの中島理志氏)という。
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