Armが不滅のGPU「イモータリス」を投入、民生機器向けIPセット「TCS22」も進化:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
Armが民生機器向けプロダクトIPセット「Arm Total Compute Solution(TCS)」の最新パッケージ「TCS22」を発表。最大の特徴は、主にスマートフォンを用いたモバイルゲーミングに求められる“ビジュアル体験”の高度化に対応するため、新たなGPUプロダクトとしてフラグシップに位置付ける「Immortalis(イモータリス)」の投入である。
Armの日本法人アームは2022年6月29日、オンラインで会見を開き、民生機器向けプロダクトIPセット「Arm Total Compute Solution(TCS)」の最新パッケージ「TCS22」を発表した。最大の特徴は、主にスマートフォンを用いたモバイルゲーミングに求められる“ビジュアル体験”の高度化に対応するため、新たなGPUプロダクトとしてフラグシップに位置付ける「Immortalis(イモータリス)」を投入したことだ。この他、CPUもピーク性能で従来比25%増を達成した「Cortex-X3」などをそろえた。
Armは、2021年3月に発表した最新アーキテクチャ「Armv9」と合わせて、スマートフォンやテレビ、セットトップボックス、スマートウォッチなどの民生機器向けプロダクトIPについて、各機器に最適なCPUとGPU、システムIPをセットで用意するTCSの展開をスタートさせた。今回のTCS22は、TCSとして初投入となった2021年5月発表の「TCS21」の発展進化版となる。
アーム 社長の内海弦氏は「スマートフォンを中心に民生機器でのユーザー体験が進化している。そして究極のユーザー体験を実現するには、グラフィックス処理に映像認識性能なども含めた“ビジュアル体験”が鍵になる。そこで、新ブランドのGPUを投入することを決めた。今後市場が拡大するメタバースにおいても、この新たなArmのGPUの果たす役割は大きい」と語る。
「ハイエンドとは次元の異なるスーパーハイエンドの先駆け」
TCS21は、メディアテック(Mediatek)が投入したハイエンドスマートフォン向けプロセッサ「Dimensity 9000」などに採用され実績を積み重ねている。この実績を踏まえるとともに、市場が拡大するモバイルゲーミングを強く意識してTCS22で大きな強化が図られたのがGPUである。アーム リージョナルマーケティング・ディレクターの菅波憲一氏は「いわゆるAAAタイトルがモバイルゲーミングに参入しており、スマートフォンに求められるグラフィックス性能はこれまでのレベルをはるかに超えている。Armとしては、高い評価を受けてきた低消費電力性能を重視しつつ、この処理性能に対する強いニーズを満たしていく新たなGPUプロダクトを開発していく意志を込め、ハイエンドとは次元の異なるスーパーハイエンドの先駆けとして、今回のイモータリスを開発した」と説明する。
なおイモータリスは、英語で「不滅の」「永遠の」などの意味があるとともに、そのアルファベット表記の中に既存のGPUプロダクト名である「Mali」のアルファベット4文字が含まれている。今後は、GPUのプロセッサコア数で10個以上の用途がイモータリスの対象となり、Maliについてはプロセッサコア数で10個以下のコストパフォーマンスが重視される用途が対象になるという。
TCS22で投入された「Immortalis-G715」は、TCS21で投入されたハイエンドGPUプロダクトの「Mali-G710」と比べて、グラフィックス処理性能で15%増、同じグラフィックス処理性能であれば15%の効率向上、機械学習(ML)処理性能で同2倍を実現するとともに、高度な“ビジュアル体験”で求められるレイトレーシングユニットなども搭載している。グラフィックス処理性能は、新ブランドのGPUとして飛び抜けた向上とはいい難いが「今後のイモータリスは20コア、30コアなお、Maliとは異なるレベルでの性能向上を進めていく。そのスタート地点になるのがImmortalis-G715だ」(菅波氏)。
なお、MaliもTCS22でアップデートされており「Mali-G715」と「Mali-G615」が投入されている。Mali-G715の性能については、同じグラフィックス処理性能であれば15%のエネルギー効率向上となっており、Mali-G715をベースにImmortalis-G715が開発されたことがうかがえる。
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