Armが不滅のGPU「イモータリス」を投入、民生機器向けIPセット「TCS22」も進化:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
Armが民生機器向けプロダクトIPセット「Arm Total Compute Solution(TCS)」の最新パッケージ「TCS22」を発表。最大の特徴は、主にスマートフォンを用いたモバイルゲーミングに求められる“ビジュアル体験”の高度化に対応するため、新たなGPUプロダクトとしてフラグシップに位置付ける「Immortalis(イモータリス)」の投入である。
「TCS22」は機械学習処理性能が大幅に向上
TCS22のCPUについては、TCS21の以前から“フラグシップ”として展開してきた「Cortex-Xシリーズ」で最新となる「Cortex-X3」を投入する。TCS21の「Cortex-X2」と比べて、スマートフォンで25%、ノートPC(いわゆるWindows on Arm)で34%のピーク性能向上を実現している。一方、従来の「Cortex-Aシリーズ」についてはbig.LITTLE構成における高性能処理を担うbigコアについて、TCS21の「Cortex-A710」を改良した「Cortex-A715」を開発した。従来比でエネルギー効率は20%、処理性能は5%向上しており、最初のフラグシップCPUである「Cortex-X1」に匹敵する。
また、TCS21で4年ぶりに投入したLITTLEコアの「Cortex-A510」については、処理性能を維持しながら消費電力を10%低減させた。複数コアから成るCPUクラスタを制御する「DSU-110」についても、サポートコア数を8から12に増やしている。Cortex-A510とDSU-110は別プロダクトにはせず、性能をそのままアップデートさせた格好だ。
なお、TCS22は、TCS21と比べて機械学習処理性能が大幅に向上した。これは物体検知や超解像など各アプリケーションへの最適化と、メモリアクセスの向上、機械学習ライブラリの改善などを積み重ねて実現したもので、物体検知43%、超解像32%、物体分類30%、リアルタイム認識39%という性能向上を確認している。Armは、TCS22のキーワードとして掲げた“ビジュアル体験”について、グラフィックス処理性能だけでなく、MLなどを用いた画像認識性能も必要になるとしており、今後も性能向上が図られる見通しである。
TCSについては、今後も毎年アップデートしていく方針だ。2023年発表の「TCS23」では次世代イモータリスの「Titan」と次世代Cortex-Xシリーズの「CXC23」が、2024年発表のTCS24」では次々世代イモータリスの「Krake」と次々世代Cortex-Xシリーズの「CXC24」が予定されている。
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