普及価格のデバイスにもAIを、Armの新たなプロセッサIP:組み込み開発ニュース
アームは2019年12月6日、東京都内で記者説明会を開き、メインストリーム向けプロセッサIP(Intellectual Property)の最新動向を解説した。機械学習や美麗なグラフィックスによる高品位なユーザー体験の提供を、普及価格帯のモバイルデバイスや民生機器にも拡大するという。
アームは2019年12月6日、東京都内で記者説明会を開き、メインストリーム向けプロセッサIP(Intellectual Property)の最新動向を解説した。機械学習や美麗なグラフィックスによる高品位なユーザー体験の提供を、普及価格帯のモバイルデバイスや民生機器にも拡大するという。
同社は同年10月、NPU(機械学習専用プロセッサ)向けIP「Ethos-N57」および「Ethos-N37」、GPU向けIP「Mali-G57」、そしてDPU(ディスプレイプロセッサ)向けIP「Mali-D37」を発表している。これらIPは、同社CPUコアIP「Cortex-A77」や「Cortex-A55」などと組み合わせ、次世代のメインストリームやエントリー価格帯スマートフォンやテレビ、ホームハブ、カメラなどに向ける。
以前よりハイエンドデバイス向けの「Ethos-N77」を加えて、同社のNPUラインアップは3種類に拡大した。Ethos-N77の演算性能は最大4TOPS(1GHz動作時)を発揮し、最大5TOPS/Wの電力効率を実現した。新たに登場したEthos-N57は最大2TOPS(同)、Ethos-N37は最大1TOPS(同)を発揮。特に、Ethos-N37は1mm2未満で実装でき、最小面積(Arm)の推論プロセッサであるという。
英Armでマーケティングプログラム担当バイスプレジデントを務めるイアン・スマイス氏は「Ethos-N37は小さなダイサイズと低消費電力、限られたメモリ帯域で動作するように設計している」と語り、性能と電力効率のバランスに優れるEthos-N57は「複数のアプリケーションが並行して動いているユースケースに向く」と説明した。
どのIPも基本的なアーキテクチャは共通で、INT8(8ビット整数)とINT16の演算精度に最適化している。畳み込み演算を高速に処理するアルゴリズム「Winograd」やスパース化に対応し、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)やRNN(リカレントニューラルネットワーク)などの推論を高速に処理できる。超解像や物体検出、画像分類、音声翻訳などのアプリケーションを、低消費電力および省ダイサイズなチップで実現するという。
Mali-G57は、メインストリーム向けGPUとして初めてValhallアーキテクチャを採用したIPとなる。前世代の「Mali-G52」と比較して、同一チップ面積当たり30%のゲーミング性能、60%の機械学習処理性能向上を果たした。これには、実行ユニットの構成など前世代からマイクロアーキテクチャに大きく手を加えたことが貢献したとする。命令セットもシンプルかつコンパイラフレンドリーなものとなったとし、クロノスグループが開発する3DCG用API「Vulkan」にも新たに対応した。
Mali-D37は高度なグラフィックス性能までは必要ないが、組み込みなどディスプレイコントローラーを求めるニーズに対応したIPとなる。フルHDや2Kといった解像度をサポートし、16nmプロセスを採用したチップは1mm2未満で実装できるという。GPUでディスプレイ出力処理と関連メモリマネジメント処理を行った場合と比較して、システム消費電力を30%削減できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AIやAR、VRを民生機器用デバイスへ搭載できる最新プロセッサIPを発表
Armは、AIやAR、VR搭載のモバイルデバイスやコンシューマー機器向けに、ML向けプロセッサ「Arm Ethos-N57」「Arm Ethos-N37」、Maliグラフィックスプロセッサ「Arm Mali-G57」、Maliディスプレイプロセッサ「Arm Mali-D37」を発表した。 - 人の目のように明暗を認識し、高画質を提供する画像処理プロセッサ
Armは、人の網膜のようにコントラストに順応できるIridix技術を採用したイメージシグナルプロセッサ(ISP)「Arm Mali-C52」「Arm Mali-C32」を発表した。ドローンやスマートホームアシスタント、防犯カメラなどのリアルタイム画質を向上する。 - Armが新ライセンスモデル「Flexible Access」を発表、必要な分だけ支払い
Armは、半導体設計資産の利用を拡大するために新しい提供モデル「Arm Flexible Access」を発表した。メーカーはライセンス取得前から、必要なIPを利用してプロジェクトを開始でき、生産段階に進んでからライセンス料を支払う。 - VRの3D酔いを解消、最新のディスプレイプロセッサIPを発表
Armは、ヘッドマウントディスプレイのVR性能を向上させたディスプレイプロセッサIP「Arm Mali-D77」を発表。3D酔いの解消、3K120への最適化とともに、システムの帯域幅と消費電力の低減により、没入感の高いVR体験を提供する。 - IPライセンスを拡大、7nmプロセスのTCAMやEthernet TSNなどを追加
ルネサス エレクトロニクスは、半導体の設計情報であるIPの販売を拡大する。7nmのSRAMやTCAMなど先端プロセスのIPや、Ethernet TSNなど先進規格のIPなどを提供する。 - Arm「Custom Instruction」の衝撃、RISC-Vへの徹底抗戦を貫く
2019年10月6〜8日にかけてArmが年次イベント「Arm TechCon 2019」を開催した。本連載では、同イベントの発表内容をピックアップする形で同社の最新動向について報告する。まずは、Armのこれまでの方針を大転換することとなった、ユーザーに独自命令を組み込むことを許す「Custom Instruction」について紹介しよう。