Armがサーバ向けプロセッサコア「Neoverse」の第3世代品を投入、シェアも急拡大:組み込み開発ニュース
Armがクラウド/サーバ向けプロセッサコア「Neoverse」の第3世代プロダクトを発表。また、Neoverseを採用したIC設計のコストとリスクを低減し市場投入期間を短縮するためのサブシステムIP「Arm Neoverse Compute Subsystems(CSS)」の適用範囲を拡大する。
Armは2024年2月22日、クラウド/サーバ向けプロセッサコア「Neoverse(ネオバース)」の第3世代プロダクトを発表した。ピーク性能を重視する「Vシリーズ」で「V3」、スケールアウト性能を重視する「Nシリーズ」で「N3」、高効率の「Eシリーズ」で「E3」を投入するとともに、Neoverseを採用したIC設計のコストとリスクを低減し市場投入期間を短縮するためのサブシステムIP「Arm Neoverse Compute Subsystems(CSS)」の適用範囲を従来のNシリーズだけでなくVシリーズにも拡大する。さらに、NeoverseとCSSに加え、サードバーティーIPやファウンドリサービスなどとの組み合わせで半導体製品の市場投入期間を短縮するサービス「Arm Total Design(ATD)」も推進していく方針である。
今回の発表では、V3とN3にそれぞれCSSを組み合わせた「CSS V3」と「CSS N3」として性能概要などが発表されている。CSS V3は、CSSとの組み合わせIPとして初めて2023年8月にリリースされた「CSS N2」と比べてソケット当たり性能を50%向上できる。1ソケット当たりの最大コア数は128で、DDR5/LPDDDR5やHBM3などの高速メモリ、PCIe Gen5やCXL 3.0などの高速インタフェースにも対応している。
高効率が求められる用途を重視するCSS N3は、消費電力1W当たりの1コアの処理性能がCSS N2比で20%向上している。コア数は8〜32コアで、最大の32コア構成でもTDP(熱設計電力)を40W以下にすることができる。
なお、V3、N3とも前世代と比較して、クラウドやサーバで処理されるさまざまなタスクの処理性能を10〜30%向上しているが、足元で特に要求が高まっているAI(人工知能)データ分析性能についてはV3が84%増、N3が196%増と大幅な向上を実現できている。これは、勾配法を活用して回路設計を最適化する「XGBOOST」を採用した成果である。
この他、クラウド/サーバ向けプロセッサをはじめ先端半導体製品への採用が拡大しているチップレット技術についても、エコシステムパートナーとともに対応する「Arm Chiplet System Architecture(CSA)」を用意している。ATDはこのCSAと連携することによって、さらに効果を発揮することになる。また、これらのさまざまな施策をてこに、第4世代品以降も適宜プロダクトを投入していく計画である。
「Neoverse」のロードマップ。「Vシリーズ」に対応する「CSS Vega」「Adonis」、Nシリーズに対応する「Dionysus」「CSS Ranger」など第4世代品の投入も計画している[クリックで拡大] 出所:Arm
現在、NVIDIAの「Grace Hopper」や「BlueField」、AWS(Amazon Web Services)の「Graviton4」や「Nitro」、マイクロソフトの「Maia 100」や「Cobalt 100」などArmのNeoverseを採用する製品が増えている。
シェア数値としては、クラウドコンピューティングで10%、ネットワーク関連製品で26%、その他ITインフラで16%となっており、初めてNeoverseを発表した2018年と比べて着実に採用実績を積み上げつつある。Armの日本法人・アームの代表取締役社長を務める横山崇幸氏は「クラウド/サーバ向けとなるNeoverseの拡販はまだ始まったばかりだが、近年急速にシェアが伸びている。パフォーマンスやフレキシビリティ、エコシステムもさることながら、カーボンニュートラルなどに対応可能な高い電力効率が高い評価を得ている。このトレンドは今後もシェア向上を後押ししていくことになるだろう」と述べている。
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