三菱重工はガスタービンと原子力と防衛で1兆円伸ばす、2026年度に売上高5.7兆円へ:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
三菱重工業は、2024〜2026年度の中期経営計画「2024事業計画(24事計)」について説明。24中計の最終年度となる2026年度の業績目標は、2023年度業績と比べて、売上高は20%増の5.7兆円、事業利益額は60%増の4500億円、ROEは1ポイント増の12%を掲げた。
GTCCは世界シェアトップを堅持しさらに伸ばす
伸長事業の筆頭に上がるGTCCは、三菱重工業が得意とする高効率の高性能大型機が主流であり、CO2排出規制に伴う燃料転換、再エネ拡大に伴うグリッド安定化のための調整電源、成長領域とも関わるデータセンター領域や半導体製造工場向けのオンサイト電源などの需要があり、2030年まで一定規模で推移すると見込みだ。また、GTCCをベースに液化天然ガスから水素/アンモニアに燃料転換して脱炭素を実現する需要も本格化しつつあるという。泉澤氏は「2022年からの世界シェアトップを堅持しつつ、水素/アンモニアやCO2を回収できるCCUSとの組み合わせ提案なども進めて、さらにシェアを伸ばせるようにしたい」と強調する。
原子力は、政府が2023年2月に発表した「GX実現に向けた基本方針」で原子力活用推進が明記されていることから、原子力発電所の再稼働支援に加えて、革新軽水炉「SRZ-1200」の設計推進、高速炉および高温ガス炉の実証炉開発、海外向けの関連機器輸出などの取り組みを着実に推進する。なお、SRZ-1200については、設置サイトが決まらない段階での設計はほぼ完了しており、政府が2024年中ごろに発表予定の「第7次エネルギー基本計画」などに基づき設置サイトが決まればさらに設計を進める準備はできているとする。
防衛では、政府の防衛力抜本的強化の方針を受けて、2023年度末時点における防衛・宇宙事業の受注高が前年度比2.4倍の1兆8781億円となっている。この受注高を含めて今後も防衛予算は増額され、24中計の売上高に着実に反映されていくことを考えれば事業環境は良好といえる。社内の人的リソース最適活用も含めて、人員を約3割増員するなど開発/生産能力の増強にも務めている。
成長領域のうち、水素/アンモニア、CCUSは、24事計期間中は国内外のプロジェクト参加やパートナーリングの拡大によって実績を積み上げていく段階にある。売上高への反映で最も期待されるのは電化/データセンターで、2023年7月に買収を発表した米国のコンセントリック(Concentric)を北米サービス拠点として、電源、冷却、制御をワンストップ化したサービスを提供していく方針だ。また、高知能化EMS(エネルギーマネジメントシステム)として、三菱重工業が制御システムのデジタルプラットフォームとして開発を進めている「ΣSynX(シグマシンクス)」を活用していく方針である。
これらの他、同社のカーボンニュートラル施策である「MISSION NET ZERO」に向けた取り組みの一つとして、鉄道用ブレーキなどを手掛ける三原製作所(広島県三原市)を舞台に工場カーボンニュートラル化の実践的なノウハウ獲得を進めていく方針である。三原製作所の知見やノウハウを今後全社で横展開し、全社レベルでのCO2排出削減につなげていくとしている。
会見では、2024年3月に経済産業省が発表した「航空機産業戦略」は24中計に組み込まれているかという質問があった。泉澤氏は「航空機産業戦略は構想が出ている段階で、当社から話すべきことはないし、答えようがない。24中計にも織り込んでいない」と述べている。
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