迫りくる物流の2024年問題、荷役効率化に向けた無人フォークリフト活用:FAインタビュー
三菱ロジスネクストは代表取締役社長の間野裕一氏の合同インタビューに応じた。
三菱ロジスネクストは2024年3月5日、同社 滋賀工場(滋賀県近江八幡市)において代表取締役社長の間野裕一氏の合同インタビューに応じた。
無人フォークリフトを使い荷積み、荷降ろしを自動化
トラックドライバーの長時間労働に対する罰則付き上限規制導入によって、輸送能力が不足して従来のようにモノが届けられなくなる懸念もある物流の2024年問題。三菱ロジスネクストでは長時間労働の温床になっているトラックの荷待ち時間の削減およびトラックへの荷積み、荷降ろしの効率化に取り組んでいる。
2021年度から三菱重工業と協力して鴻池運輸とともにこれまで難しかったAGF(無人フォークリフト)による屋外での荷積み、荷降ろし実現に向けた実証実験に取り組んだ。間野氏は「開発は順調に進んでおり、かなり“いい線”までいっている。特に今までトラックドライバーの方々がフォークリフトを使ってやっていた作業を自動化することで物流効率を上げられる。非常に期待が大きい分野だ」と話す。
「かしこく・つなぐ」をコンセプトにした三菱重工業のデジタルイノベーションブランド「ΣSynX(シグマシンクス)」を活用したAGFの開発も進めており、既に展示会ではコンセプト車両を公開している。「われわれは顧客との接点という点では非常に強みを持っているが、頭脳という意味では限界がある。そこで三菱重工業の頭脳をかなり活用させていただいている。どんなに最先端のモノを開発してもユーザーとの接点が入れば、それは売り物にはなっていかない。そこは補完しあえる領域だ」(間野氏)。
国内におけるAGFの市場規模は台数レベルで見ればまだまだ小さい。熟練オペレーターが操る有人フォークリフトとの性能差もまだ存在する。
「有人フォークリフトの方がAGFより作業が速くて便利だ。ただこれが2024年問題で人手が足りなくなると、人に頼れなくなり、自動化しなければならなくなる。速さとフレキシビリティがAGF普及のカギになる将来、間違いなく労働力不足の問題は大きくなるので、自動化のニーズも必ず高まっていく。欧州では自動化が進んでおり、米国でも自動化市場が伸びている。日本の顧客も関心は高く持っており、今後注文につながっていくのではないかと考えている」(間野氏)。
キリングループの海老名物流センター(神奈川県海老名市)への自動ピッキングソリューションの導入が決まっている。AGFやAGV(無人搬送車)、パレタイザーを組み合わせたソリューションだ。従来、作業者自身が効率化を考えながら行っていたピッキング作業をΣシンクスを活用して自動化、知能化した。「その他の分野へも三菱重工業とともに取り組んでいきたい」(間野氏)。
パレットを使わない手荷役作業のパレット化を政府も推奨するなど、今後も有人フォークリフトの需要は底堅く続く見込みだ。同社でもAGFだけでなく、有人フォークリフトの安心、安全に向けた技術開発に取り組んでおり、AI(人工知能)による人検知が可能な「OmniEye」と回生ブレーキ制御を組み合わせた衝突事故防止をサポートシステムも開発している。
「フォーククリートはかなり死角が多くて事故が絶えず、今後は熟練のオペレーターも減ってくる。開発スピードがポイントになると見て、いろんなパートナーとタイアップしながら、ユーザーとともに早いスピードで開発を進めようとしている」(間野氏)
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