連載
穏やかなテクノロジーでスマートホーム市場を切り開くmui Lab:越智岳人の注目スタートアップ(11)(3/3 ページ)
天然木の表面に情報が浮かび上がる、他の製品とは一線を画すユニークなスマートホームコントローラー「muiボード」を開発するスタートアップのmui Labに、これまでの歩みや事業の方向性、スマートホーム市場にかける意気込みを聞いた。
ハードウェアとプラットフォーム、ユーザー体験の融合で差別化
唯一無二のハードウェアとユーザー体験を武器に、mui Labが市場参入してから5年がたった。muiボード第1世代リリース後はクラウドサービスの拡充に注力しつつ、大企業との共同開発を積み重ねた。
くしくも先進国を中心にスマートホーム市場が急成長し、日本でも折からのエネルギー価格高騰によるエネルギーマネジメントへの意識の高まりや、国策としての再生可能エネルギーへの投資加速など、mui Labにとっては追い風ともいえる状況が生まれている。
今後、競合企業や後発参入企業も増えることが予想される中で、独自性を損なわないことが重要だと佐藤氏は語る。
「スマートホームコントローラーを導入して省エネができ、補助金の対象になるというだけの付加価値であれば、常に他社と横並びになってしまいます。私たちはより良い空間を演出でき、家族との思い出が生み出せるようなユーザー体験を提供することで差別化を図っています。私たちの考えに共感する事業会社も増えていることを踏まえると、よりとがったユーザー体験を自分たちで作り込むことが欠かせないと思います」(佐藤氏)
スペックやコストパフォーマンスといった定量的な価値だけに拘泥するのではなく、ユーザー体験や思い出といった定性的な価値を作り込む――。過度にテクノロジーを主張しないmui Labのプロダクトとサービスから今後も目が離せない。
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