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超大型3Dプリンタを製造現場へ、コミュニティー主導型モノづくりで挑戦を続けるExtraBold越智岳人の注目スタートアップ(5)(1/3 ページ)

欧米が中心で、日本は大きなビハインドを負っている3Dプリンタ業界において、ペレット式の超大型3Dプリンタという変わった切り口で市場参入を目指すExtraBold。同社が発表した大型3Dプリンタ「EXF-12」は、FDM方式3Dプリンタを単純に大型化したものではなく、一般の製造ラインで活用されるための工夫が随所にちりばめられているという。同社 代表取締役社長の原雄司氏に超大型3Dプリンタ開発にかける思いを聞いた。

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ExtraBoldが2021年9月に発表した大型3Dプリンタ「EXF-12」
ExtraBoldが2021年9月に発表した大型3Dプリンタ「EXF-12」[クリックで拡大] 出所:ExtraBold

 3Dプリントのニーズは多品種少量生産や金型レスから、製造のデジタル化、サステナビリティにまで広がっている。近年はCarbon(2019年)やDesktop Metal(2020年)など上場する新興勢力も登場。FormlabsやMarkforgedなどのユニコーン企業も上場間近といわれている。しかし、売上上位に君臨する3Dプリンタ企業の多くは欧米発であり、日本は大きなビハインドを負っている。そういった状況下で、超大型FDM(熱溶解積層)方式3Dプリンタという変わった切り口で市場参入を目指すスタートアップがいる。東京に拠点を構えるExtraBold(エクストラボールド)だ。

 ExtraBoldが2021年9月に発表した大型3Dプリンタ「EXF-12」は、既存のFDM方式3Dプリンタを単純に大型化したものではない。一般の製造ラインで活用されるための工夫が随所にちりばめられている。

 樹脂ペレット材に対応する独自設計の3Dプリントヘッドにより、毎時15kgの最大吐出量を実現。材料はABS、PLA、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)など一般的な樹脂素材に対応し、ペレット状になっていればリサイクル素材でも造形可能としている。一方でFDM方式にありがちな造形物の反りを抑えるため、庫内と造形エリアの床面に当たるビルドプレートは細かな温度調節にも対応している。

「EXF-12」の特徴
「EXF-12」の特徴[クリックで拡大] 出所:ExtraBold

 また、工作機械で広く利用されているファナック製の制御装置を採用し、高い造形精度を効率良く実現できるようにした。その他にも自動消火装置や温度センサー、安全スイッチなど安全対策にも配慮している。

 FDM方式による従来の大型3Dプリンタはデスクトップサイズの3Dプリンタを、そのまま大きくしたような仕様になっているものが多い。結果的に造形物の安定性や機械そのものの安全性に疑問符が付くものが多かったとExtraBold 代表取締役社長の原雄司氏は指摘する。工場の製造ラインで稼働できる基準を満たしつつ、造形品質やスピードなどFDM方式3Dプリンタの課題の解消がEXF-12のコンセプトだという。

 「ソフトウェアの可能性を担保し、造形品質を最も左右する部分にコストをかけています。現時点では高スペック過ぎるぐらいですが、先々のハードウェア/ソフトウェアのアップデートに制限がないという面では制御装置には妥協できません。オペレーターが他の工作機械と同じ感覚で操作できるUX(ユーザーエクスペリエンス)と性能に注力しました」(原氏)

 加えて、新品の樹脂材だけでなく、工場で排出された樹脂ゴミをリサイクルして造形することも可能だ。ExtraBoldは大型3Dプリンタの開発構想段階から、工場で大量に排出される樹脂ゴミの再利用に着目。家庭から排出されるゴミとは異なり、再利用までの工程も短いので、加工の手間が掛かるフィラメント状ではなくペレット状に再加工すれば、工場内でのリサイクルも比較的容易にできると考えた。

 リサイクル可能な3Dプリントに対する企業からの関心は高い。パートナー企業である前田技研、三井化学と共同出展した「日本ものづくりワールド 2022」(会場:東京ビッグサイト/会期:2022年6月22〜24日)では、プラスチック粉砕機と空冷式造粒機の実演デモや、EXF-12で造形した樹脂製の家具やインテリアを披露。ブースにはさまざまな業界からの反響があったという。

 「家具については、介護やインテリア、住宅/不動産業界の方から実際に購入したいという話があり、自分たちのソリューションに対する需要の高さを実感しました。リサイクル可能であることに加え、工業品グレードの製品を造形できるという品質面でも評価を得られたことは自信につながりました」(原氏)

 日本国内でもサステナブル経営への関心が強まる中、ExtraBoldによるソリューションに対する期待は大きい。しかし、EXF-12の完成に至るまでには紆余(うよ)曲折があった。

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