建機の脱炭素は電池駆動だけじゃない、燃料電池や有線電動に加え代替燃料も:CSPI-EXPO 2024レポート(3/3 ページ)
「第6回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2024)」において、カーボンニュートラルに対応する建設機械が多数展示された。大容量のリチウムイオン電池を搭載するフル電動建機だけでなく、燃料電池や有線電動、代替燃料などの提案も行われていた。
コベルコ建機は水素燃料電池と有線電動を提案
ここまで紹介したリチウムイオン電池で駆動するフル電動建機に対して、異なる方式を提案する建機メーカーもあった。
コベルコ建機は、1.7トンクラスのフル電動油圧ショベル「SK17SRe」を展示する一方で、より大型の油圧ショベルについては水素燃料電池で駆動する油圧ショベルを開発中である。これまで広島事業所(広島市佐伯区)で基礎評価を続けてきたが、水素充填環境と掘削評価可能な環境となる神戸製鋼所の高砂製作所(兵庫県高砂市)でさらに評価を進めることを2024年5月22日に発表している。SK17SReは2025年、水素燃料電池油圧ショベルは2030年の市場投入を想定している。
これらに加えて、車両の移動が少ないクローラクレーンについては、有線で電力を供給する有線電動式を提案する方針だ。「一般的に大型建設現場には給電設備があるのでこれを活用する。高価な大容量のリチウムイオン電池を搭載する必要がなく、充電時間を気にする必要がない。そして、現行のクローラクレーンのシステムを有効活用しながら、電動化のメリットを享受できる」(コベルコ建機の説明員)という。2025年度に「CleAir(クレア)シリーズ」として正式発表する予定である。
クボタは小型油圧ショベルでの代替燃料の使用を保証
クボタは、小型のフル電動油圧ショベルを欧州市場で2024年から投入しているが、国内市場に向けて提案を強化しているのが、既存のディーゼル建機を用いながらカーボンニュートラルが可能になる次世代バイオ燃料の活用である。
同社は、日本市場における小型油圧ショベルでの代替燃料の使用についてメーカー保証を公表している。6トンクラス以下の小型油圧ショベルで世界と日本でトップシェアとなる同社の製品において、新たにフル電動の製品を購入することなく、カーボンニュートラルに対応できることは大きなインパクトがある。
これまで市販の軽油に5%まで代替燃料を混合できるB5規格には対応していたが、今回の発表で天然ガス由来のGTLや次世代バイオ燃料のHVO(水素化分解油)が利用可能になった。展示では、代替燃料対応をイメージしたラッピングを施した小型油圧ショベルを披露するなどしていた。
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