経産省と国交省がモビリティDX戦略、「多様なSDV」が日本の武器に:車載ソフトウェア(4/4 ページ)
経済産業省と国土交通省は令和6年度モビリティDX検討会を開催し、「モビリティDX戦略(案)」を発表した。
モビリティDX戦略ではSDVと自動運転技術をセットと位置付けており、競争力のあるSDVの開発には自動運転性能に直結する半導体やセンサー、高精度3次元地図の技術が必要十分な水準に達していることが不可欠だとしている。自動運転技術の実装により創出できる乗車中の余暇時間の有効活用などで、ユーザーの体験価値向上に向けたサービスの実装や選択肢の多様性が求められるという。自動車メーカーが単独で提供できるサービスには限界があり、異業種と連携したサービスを提供するにはサードパーティーが参加しやすいAPIの標準化が重要になると見込む。
SDVではスピーディーな車両開発とOTAによる継続的なアップデートが競争力となるため、APIの標準化やシミュレーション活用による開発効率化や、ソフトウェア開発やアップデートの容易性確保が課題になるとしている。また、生成AI(人工知能)を活用した部品や車両の設計、開発の効率化、サービスの創出など活用事例の創出にも取り組むべきだとしている。
自動運転技術やMaaSによる新たなモビリティサービスの提供
モビリティサービスに関しては、社会の要請に応えるビジネスの早期具体化と、将来に向けた高度な技術開発を両輪で推進する考えだ。2030年ごろまでに、両輪で進めた成果を統合し、さまざまなレイヤーでビジネスモデルを確立することを目指す。
足元でさまざまなプレイヤーが自動運転技術の開発に取り組んでいることを踏まえ、社会実装プロジェクトの推進が重要だと位置付けている。継続的な方法発信やソフトウェア人材の育成など、社会受容性の向上や環境整備を進める。また、高度な技術が必要となるロボットタクシーは他のサービスとの掛け合わせ次第で事業性を確保できる可能性があるとし、開発やサービスの創出を後押しする。自動運転システムの低コスト化や高性能化につながる要素技術の開発も推進する。
データの利活用を通じた新たな価値の創造
データの利活用には、データ連携基盤の構築と、データ利活用ビジネスの活性化の両面での取り組みが必要だ。データ連携基盤の構築では、ウラノスエコシステムにおけるユースケースの拡張や、海外のシステムとの連携などを通じて、グローバルでの地位確立を目指す。データ利活用ビジネスに関しては、ニーズの高いサプライチェーン側でのユースケースを拡張した上で、走行データの活用などのバリューチェーン側での取り組みにつなげる。
足元では、欧州電池規則への対応のため蓄電池のカーボンフットプリントの算出にニーズがあるとしている。既に先行ユースケースとして取り組みが進んでおり、その知見を活用して自動車のライフサイクルアセスメントの算定や、有事の状況把握、在庫管理や生産調整、不具合の早期発見などサプライチェーン側でのユースケース拡張を進める。その次のステップとして、ユーザーへのサービス提供の高付加価値化を目指す。
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