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設立から15年、車載ソフト標準化団体JasParの現在地と行く先つながるクルマ キーマンインタビュー(1/3 ページ)

2004年9月から車載ソフトウェアの国内標準化団体として活動してきたJasPar。設立から15年が経過する中で、自動車業界におけるソフトウェアの重要性の高まりと合わせてその存在感も大きくなりつつある。そこで、JasParの運営委員長を務める橋本寛氏に、これまでのJasParの取り組みや、第4期に当たる現在の施策の進展状況などについて聞いた。

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 100年に一度の変革期を迎えているといわれる自動車業界。今やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)、MaaS(Mobility-as-a-Service)などといった言葉に代表されるように、従来のようにいいクルマを作って売ればいい時代から、自動車を使った移動をサービスとして提供する時代に移り変わりつつある。【訂正あり】

 自動車業界で働く上で重視された技術も、エンジンや車体を開発するのに必要な機械設計や加工技術から、より高精度な制御に必要なシステムの開発に必要な電気/電子技術が求められるようになったが、来るべき激動の変革期を乗り越えるにはソフトウェア技術が重要な役割を果たすとみられている。大手自動車メーカーやメガサプライヤーが、こぞってソフトウェア技術者を雇用しようとしているのがその証左だろう。

 2004年9月からこの車載ソフトウェアについて、国内の自動車業界で標準化活動を続けてきた団体として知られているのがJasPar(Japan Automotive Software Platform and Architecture)だ。JasParの設立から15年が経過する中で、自動車業界におけるソフトウェアの重要性の高まりと合わせて存在感も大きくなりつつある。そこで、JasParの運営委員長を務める、本田技術研究所 オートモービルセンター 統合制御開発室 第4ブロック 主任研究員の橋本寛氏に、これまでのJasParの取り組みや、第4期に当たる現在の施策の進展状況などについて聞いた。

参加企業数は総計234社、当初の約4倍に

MONOist 橋本様はJasParの設立当初から活動に参加し、2016年4月には3代目の運営委員長に就任しました。あらためてJasParの設立の経緯について教えてください。

JasPar 運営委員長の橋本寛氏
JasPar 運営委員長の橋本寛氏

橋本氏 私自身は本田技術研究所で「レジェンド」のV6エンジンをはじめとするエンジンECUや、センサーアクチュエータ、イグナイタ、イグニッションコイルなども含めたエンジンシステム全体の開発を担当してきた。また、2000年代の燃料電池車の開発ではECU全体のアーキテクチャを担当し、その後ADAS(先進運転支援システム)などシャシー系のシステム開発にも関わっている。

 JasParの設立のきっかけになったのは、2000年代前半に次世代車載LANと目されていたFlexRayとTTP/C(Time Triggered Protocol class C)のどちらを日本の自動車業界として採用すべきかを調査するためのドイツでの視察になるだろう。そしてそのタイミングで、車載ソフトウェアの国際標準を定めるAUTOSARの立ち上げも知ることになった。

 このFlexRayとAUTOSARに代表される車載ソフトウェア関連の標準化の流れに、日本の自動車業界として対応する必要があると考え2004年9月に設立されたのがJasParだ。

 JasParの運営体制は、トヨタ自動車、日産自動車、本田技術研究所、デンソー、豊田通商(当初は豊通エレクトロニクス)の5社が幹事会員を務める点では当初から変わっていない。ただし、各ワーキンググループ(WG)活動に参加できる正会員、成果物を利用できる準会員を加えた会員数は189社で、これら会員企業のグループ会員45社を加えれば総計234社となる。当初の会員数は約60社だったので、発足から15年で約4倍にまで拡大したことになる。

JasParの会員構成
JasParの会員構成(2019年10月時点)(クリックで拡大) 出典:JasPar

MONOist 会員数の増加にみられるようにこの15年間で車載ソフトウェアの重要性は大きく高まっています。

橋本氏 JasParの設立当初の活動は、欧州発の国際標準であるFlexRayとAUTOSARの使いこなしが大きな目的になっていた。現在も掲げている団体としてのミッション、ビジョンを定めたのは設立から3年後になる。

JasParのミッションとビジョン
JasParのミッションとビジョン(クリックで拡大) 出典:JasPar

 FlexRayやAUTOSARに代表されるように、JasParの活動は各社が標準として利用できる基盤の使いこなしと、それと関わる標準を定めることを中心に始まった。ただし現在は、基盤系のソフトウェアよりも、アプリケーションについてどう対応していくのか、APIの標準化をどうしていくのかを探ることを期待されるようになっている。CASE時代になって増大している各社の困りごとをどのように解決していくかが重要だ。

 また2018年から、従来は内部クローズにしていたJasParで定めた標準規格の内容を誰でも読めるようにオープンにした。これは、JasParの成果をより多くの方に知ってもらうことに加えて、グローバル調達に向けて仕様を定める際に参照してもらうことも目的としている。ただし、活動成果を利用するための技術文書は会員企業でなければアクセスできない。

 先日、団体の活動をサポートしてくれている弁護士の先生といろいろ話す機会があったが「JasParは発足当初とかなり違う団体になっているのでは」という意見をいただいた。そういった変化を考慮して、団体としての規定の見直しも始めているところだ。

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