設立から15年、車載ソフト標準化団体JasParの現在地と行く先:つながるクルマ キーマンインタビュー(2/3 ページ)
2004年9月から車載ソフトウェアの国内標準化団体として活動してきたJasPar。設立から15年が経過する中で、自動車業界におけるソフトウェアの重要性の高まりと合わせてその存在感も大きくなりつつある。そこで、JasParの運営委員長を務める橋本寛氏に、これまでのJasParの取り組みや、第4期に当たる現在の施策の進展状況などについて聞いた。
グローバルに広がるJasParの活動
MONOist JasParはこれまでどのような活動を進めてきましたか。
橋本氏 JasParの活動は、幹事会社と正会員が参加するWGごとに行っている。当初のWG数は3〜4つだったが、現在は10を超えている。それだけ活動範囲が広がっているということだ。
これまで約15年の活動は、約4年ごとに大きなテーマが変わっており、現在は第4期目になる。最初の第1期では、制御系システムが主な対象になっていたが、AUTOSAR関連の国家プロジェクトと関わるようになった。また、Bluetoothをはじめとする情報系コネクティビティに関連する活動も始めて、このタイミングでエレクトロニクス系ベンダーの会員が参加するようになった。
第2期の中核となったのが、自動車向け機能安全規格であるISO 26262に関する国家プロジェクトだろう。ここで、ソフトウェア/ツールベンダーの会員の参加が増えた。そして第3期で進めてきたのがサイバーセキュリティへの対応だ。
また、JasPar単独ではなく、さまざまな団体と連携するための体制整備も進んできた。国内であれば、日本自動車工業会(JAMA)や自動車技術会(JSAE)との連携が深まっており、海外であればAUTOSARの他、車載イーサネット関連やWi-Fi、Bluetooth、USBといった通信技術の標準化団体と連携できている。
MONOist 現在進めている第4期の活動内容について教えてください。
橋本氏 第4期の活動の中核的なテーマになっているのは自動運転関連になるだろう。ただし、これまでの活動を踏まえつつ、自動運転だけでなく新たな車載ネットワーク規格や車載セキュリティに関わる国内外の動きと連携しながら活動を展開している。
現在のWGは11あり、「機能安全」「AD/ADAS車両制御IF」「AUTOSAR標準化」「車載LAN」「Bluetooth今フォーマンス」「コネクティビティ」「次世代高速LAN」「車両情報共用検討」「情報セキュリティ推進」「OTA技術」「情報セキュリティ技術」から成る。
例えば、機能安全WGであれば、車載イーサネットにおける対応基準の統一や、自動運転車で重要になるシステム故障以外に対応するためのSOTIF(Safety of the Inteneded Functionality)についてJAMA、JSAEとの連携を進めている。AD/ADAS車両制御IFのWGでは、自動運転システムに関わるソフトウェアインタフェースを決めて、自動車メーカーやサプライヤーの参照プロセスも作っていくことを考えている。
車載LANのWGは、CANの規格策定を行っているCiA(CAN in Automation)と連携しながら、CANの高速版であるCAN FD(Flexible Data Rate)を車両に適用するための設計基準を作るとともに、CAN FDの次世代規格の策定にも貢献している。コネクティビティWGでは、クルマとスマートホームの連携を視野にした5GHz帯Wi-Fiの活用や、デジタルキーの活用に向けてCCC(Car Connectivity Consortium)とも連携している。次世代高速LANのWGは、1Gbps以上の車載イーサネットの活用に関わる活動が中心で、IEEEやJSAEと連携しながら進めている。
車両情報共用検討WGは、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の大規模実証実験システムに用いるダイナミックマップ向けのインタフェースを開発している。情報セキュリティWGの活動では、JAMAをトップに、JSAEとも連携しながら国際標準の策定で大きな成果が得られている。実際に、ISOへの提案において、JSAEと連携しドイツとともにかなりの比率で提案を主導できたと感じている。また、AUTOSARでも、セキュリティ対策技術となるメッセージ認証に関する提案を行い、実際に採用してもらうなどの成果も得られている。
【訂正】初出時、情報セキュリティWGの活動で「国連のWP.29(World Forum for the harmonization of vehicle regulations)への提案」という表記がありましたが、正しくは「ISOへの提案」の誤りでした。記事は修正済みです。
そしてOTA技術WGは、車両ソフトウェア更新の仕組みであるOTAに関する活動を行っている。これについてはISOだけでなくAUTOSARにも仕様を提案している。
これら各WGの活動にもみられるように、JasParの活動はグローバルに広がっている。
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