経営目標未達でパナソニックHDは課題事業整理に本腰、主力の車載電池は国内強化:製造マネジメントニュース(4/4 ページ)
パナソニックホールディングスは、2025年3月期が最終年度となる中期戦略の目標で3項目中2項目が未達濃厚となったことから、重点領域のさらなる強化を進める一方で、事業売却や閉鎖などを含む事業ポートフォリオ管理を強める方針を示した。
事業部ごとにROICとWACCで管理、2026年度に課題事業ゼロに
これらの戦略的投資を行う3事業以外については、事業ポートフォリオマネジメントを強化し、精査基準なども含めて進退などの管理を強化する。事業ポートフォリオマネジメントの考え方について樋口氏は「考え方としては、まずグループ共通戦略への適合性、次に事業の立地と競争力などが評価基準となる。加えて、ベストオーナーとしての視点で、パナソニックHD以外に切り出した方がよい場合は進んでその判断を行っていく」と語る。
ベストオーナーとしての視点で、事業の切り出しを行った例が、パナソニック オートモーティブシステムズ(PAS)だ。パナソニックグループ内に残すよりも他社との協業に踏み切った方が成長ができるという考えから、2023年11月に資産運用会社のApollo Global Managementとパートナーシップを発表し、成長に向けた継続投資を確保できるようにした。「資金面だけでなく、情報網やM&Aなども含め、両社にとってより幸せになる判断を行った」と楠見氏は考えを述べる。
これらの基本方針の下、事業会社傘下の事業部単位でROICでの厳格管理を新たに取り入れる。成長性とROICで事業の立地と競争力をモニタリングし、成長性のない「ROIC<事業別WACC(加重平均資本コスト)」の事業を課題事業として抜本的な施策を断行する。2026年度までにこの課題事業をゼロにし、事業別WACCが+3%以上となるROIC水準を全事業で目指す。
楠見氏は「課題事業の数などについては具体的にはいえないが、いくつかの要素があると考えている。例えば、現時点で市場環境の影響を強く受けているもの、事業の競争力や事業構造そのものが厳しいものなどがある。市場環境の影響を強く受けているものでは、中国経済の停滞の影響を受けているFA事業などがある。競争力という点では、アプライアンスの一部事業があり、業界全体が構造的に苦しいものだとテレビ事業などがある。全ての事業をデジタル的に管理するわけではないが、1つの指標としてこれらを見つつ適宜判断を下していく」と語る。
また、課題事業への対応については「競合企業に対し構造的に劣後している場合は非連続な手を打つ必要がある。そうでない場合は経営方法が悪いといえるため、改善のための手を打っていく。基本的にはそういう考えで進める」と楠見氏は述べている。
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