従来比で最大40%の摩耗低減を実現した「自己潤滑ゴム」を開発:材料技術
NOKとENEOSは潤滑性が少ない貧潤滑環境下でもこれまでと変わらない密封性を保つゴム材料を共同開発した。
NOKは2024年5月9日、ENEOSと、オイルシールなどのシール製品の摩擦を従来比で最大約40%低減し、潤滑性が少ない貧潤滑環境下でもこれまでと変わらない密封性を保つゴム材料「自己潤滑ゴム」を共同開発したと発表した。オイルシールとは、自動車のエンジンやギヤードモーターなどに利用されるもので、主に回転軸部からの油漏れや、外部からのほこりの侵入を防ぐ。
密封機能では差がないことを実験で実証
国内外では、環境負荷低減や自動車の電動化に伴い、使用される潤滑油の量は抑えられるようになり、潤滑油自体も低粘度化している傾向がある。また、モーターなどの高周速化も相まって、自動車における貧潤滑環境やシール部品が使用される環境は今後さらに厳しくなることが想定されている。
そこで、ゴム材料の配合技術を得意とするNOKとENEOSは、2019年から「シール製品の潤滑性向上による低摩擦化」をテーマに共同研究をスタートした。この研究により開発に成功した自己潤滑ゴムは、ゴムの配合を工夫することで、分子スケールで界面を制御し、少ない潤滑油を効率よく活用することができる。
自己潤滑ゴムで試作したオイルシールでは、これまでのNOKの低摩擦オイルシールよりも摩擦を平均して約30〜40%低く抑えられ、密封機能では差がないことが実験にて実証されている。自己潤滑ゴムを用いたシール製品は、低粘度の潤滑油を利用している場合や極端に油が少なく潤滑が難しい環境下でも、モーターやエンジンの回転軸における摺動発熱や摩耗の低下、劣化の防止などに貢献する。
今後、両社は自己潤滑ゴムを用いた低摩擦シール製品を製品化し、電気自動車(EV)のモーターやeAxleなどに搭載されることで、EVの電費向上に貢献していく。
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