2024年のセルロースナノファイバー世界生産量を132トンと予測:製造マネジメントニュース
矢野経済研究所は2024年のセルロースナノファイバー世界市場に関する調査結果を発表した。本稿ではこの調査結果に基づき試作やサンプル供給分を含む2024年のセルロースナノファイバー世界生産量や市場動向などを紹介する。
矢野経済研究所は2024年4月24日、2024年のセルロースナノファイバー(CNF)世界市場に関する調査結果を発表した。製紙メーカーや化学メーカーなどのセルロースナノファイバーメーカー、研究機関を対象とし、市場動向や将来展望を考察した。
試作やサンプル供給分を含む2024年のCNF世界生産量は、前年比120%の132トン(t)になる見込みだ。出荷金額では同107.7%の62億9000万円と推測する。
CNFのサンプルワークが本格化したのは2016年から2017年頃で、現在、機能を付与する機能性添加剤については安定的な需要を確保している。一方、建材などの強度を高める構造材(樹脂強化材)については、既存材料との価格差などが要因となり、当初の予想よりも需要が伸び悩んでいる状況だ。
国内CNFメーカーの生産設備を合計すると、年間1220tの生産能力を有するが、2024年の世界生産量見込みに対する同生産設備の稼働率は約10%程度だ。今後の需要拡大には、バイオ材料と組み合わせた環境対応の構造材を、低炭素で低コストな材料として普及させる必要があると考えられる。
欧州ELV(End-of-Life Vehicles)規則案への対応が迫られる自動車業界では、マテリアルリサイクル(MR)樹脂とCNF、セルロースファイバー(CeF:Cellulose Fiber)を複合した強化樹脂への注目度が高まっている。同強化樹脂は、自動車部材に求められる耐熱性や耐衝撃性、耐摩耗性を向上するための開発が進められており、今後、自動車部材向け材料として引き合いが増えるとみられる。
また、使用済み自動車部材の水平リサイクルが可能なこと、CNF強化ポリプロピレンのフィラーが植物由来であることなどから、LCA(ライフサイクルアセスメント)全体でのCO2排出量の削減が期待できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CNFを用いた燃料電池用の高分子電解膜を開発、高いプロトン伝導性を実現
王子ホールディングスと山形大学は、セルロースナノファイバー(CNF)を主成分とする、燃料電池用「高分子電解膜(PEM)」の開発に成功したと発表した。 - 無色透明で液ダレしない高粘性液を作れる新CNFパウダー、体積は従来品の50分の1
大阪大学 産業科学研究所は、水に混ぜると無色透明で液ダレしない液体を作れるセルロースナノファイバーパウダー「TEMPO-CNF」を開発した。 - 樹脂にCNFを添加し、CFRPの強度や耐久性を向上させる中間材料を開発
スギノマシンは、少量のセルロースナノファイバーをエポキシ樹脂に分散、添加したプラスチックを複合化し、それを含浸させた炭素繊維強化プラスチックのプリプレグを開発した。 - 2023年のセルロースナノファイバー世界生産量は85t、需要確保が課題
矢野経済研究所は、CNFの世界市場に関する調査結果を発表し、2023年の世界生産量を前年比106.3%の85tと予測した。CNFは期待されていた分野での採用が進まず、耐衝撃性の向上や特異性能による価値訴求など、今後の需要確保が課題となる。 - セルロースナノファイバーによる半導体材料の開発を開始
大王製紙は、東北大学、東京大学、産業技術総合研究所と共同で、セルロースナノファイバーによる半導体材料の開発を開始する。東北大学の研究グループによる研究成果を基に、新規バイオ系半導体の実用化を目指す。 - セルロースナノファイバーが新たな短絡防止コーティング剤に、阪大産研が開発
大阪大学 産業科学研究所が、水ぬれによる電子回路の短絡故障を長時間抑制できるセルロースナノファイバーを用いたコーティング技術について説明。一般的な疎水性ポリマーによる封止コーティングと異なり、水に触れたセルロースナノファイバーがゲル化して陽極側に凝集し短絡を抑制する効果があり、新たな回路保護膜として活用できる可能性がある。