CNFを用いた燃料電池用の高分子電解膜を開発、高いプロトン伝導性を実現:材料技術
王子ホールディングスと山形大学は、セルロースナノファイバー(CNF)を主成分とする、燃料電池用「高分子電解膜(PEM)」の開発に成功したと発表した。
王子ホールディングスと山形大学は2024年3月7日、セルロースナノファイバー(CNF)を主成分とする、燃料電池用「高分子電解膜(PEM)」の開発に成功したと発表した。
高いプロトン伝導性を有しながらPFASフリーも実現
同社は育成している森林の資源を生かして再生可能な木質由来の新素材開発を中心にグリーンイノベーションを推進している。グリーンイノベーションの1つとして、CNFの研究開発に取り組み、独自の高品質(高透明、高粘度、チキソトロピー)なCNFの製造を可能にした。今回、山形大学で、同大学大学院理工学研究科 教授の増原陽人氏と協力し、同社のCNFとプロトン伝導性を有する微粒子を複合化したPEMを製作し、高いプロトン伝導性と膜強度を併せ持つ特異な性能を確認した。
また、既存の燃料電池などに利用されるPEMは、フッ素を含む材料で、石油由来の樹脂製であることから、安全面や環境面の課題が指摘されている。これに対し、開発に成功したPEMは、燃料電池に求められる高いプロトン伝導性を有しながら、木質由来のCNFを主成分とし有機フッ素加工物(PFAS)フリーも実現している。
なお、脱炭素社会への転換がグローバルに進行しており、世界各国の自動車に対する環境規制が強化され、電気自動車(EV)が普及している中で、水素を燃料とし走行時に水蒸気しか発生しない燃料電池自動車(FCV)への期待は高くなってきている。
そのため燃料電池の需要は高まることが予想されている。これを踏まえて、同社は開発したPEMの実用化に向けた研究開発を進めていく。
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