核融合炉発電の研究を加速、ヘリカル型核融合炉初号機の完成は2034年を目標に:材料技術(2/2 ページ)
ヘリカル型核融合炉の開発を進める国内ベンチャー企業のHelical Fusionは、オンラインで記者会見を開き、核融合エネルギーの社会実装に向け核融合科学研究所(NIFS)内に「HF共同研究グループ」を同月に設置することでNIFSと合意したと発表した【訂正あり】。
2040年以降に100MW以上を発電できる本格商用発電炉を完成
Helical Fusionはヘリカル型核融合炉の開発で必要な知見や要素技術にNIFSの研究成果を活用している。
NIFSでは、ヘリカル型核融合炉の要素技術となる「大型ヘリカル装置(LHD)」や「高温超伝導導体」を開発している。岐阜県土岐市の拠点にあるLHDは、世界最大級の超伝導プラズマ実験装置で、水素、重水素、ヘリウムを燃料として用いて、1億℃の超高温により重水素をプラズマ化した実績を持つ他、2300万℃の超高温により水素をプラズマ化した後、48分保持した実績を有している。
【訂正:2024年4月19日13時。初出ではLHDは「1億℃の超高温により重水素と三重水素をプラズマ化した後、3000秒保持した実績を持つ」としていましたが、正しくは三重水素を燃料にしておらず、「水素、重水素、ヘリウムを燃料として用いて、1億℃の超高温により重水素をプラズマ化した実績を持つ他、2300万℃の超高温により水素をプラズマ化した後、48分保持した実績を有している。」です。訂正してお詫びいたします。】
高温超伝導導体は、ヘリカルコイルとして利用する部品で、銅酸化物超伝導体(REBCOテープ)線材を125枚内蔵しており通電可能最大電流は95kA(20ケルビンの条件下で、磁場強度が15テスラ、電流密度は120A/mm2の場合)。この超伝導導体は曲げやすい他、冷却配管をREBCOテープ線材の直近に配置することで冷却特性を向上。強度は防護装甲を内蔵することで高めており、クエンチ耐性は無絶縁コイル化することで向上させている。
既に、ヘリカルコイルへの適用を目的にNIFSでは高温超伝導導体の通電試験を岐阜県土岐市の拠点内にある超伝導マグネット研究棟で行っている。通電試験では高温超伝導試験導体や磁場発生用電磁石などから成る大型導体試験装置を用いて高温超伝導導体に通電を実施した。なお、高温超伝導導体の大型導体試験装置への設置作業では、準備した高温超伝導導体を大型導体試験装置の頭上にクレーンで移動した後、低速で慎重に隙間なく挿入した。
田口氏は「プラズマを閉じ込める役割を果たす超伝導コイルには、これまで4ケルビンという極低温で稼働する低温超電導導体が利用されていた。しかし、低温超電導導体は必要な磁場を生み出すために太くしなければならなかった。太くすることで核融合炉のサイズも大きくなりコストもよりかかるという問題があった。そこで、超伝導コイルのスリム化を目的に20ケルビンという高温で稼働し通電量が大きい高温超伝導導体の開発を進めている」と述べた。
今後、Helical FusionとNIFSは、現在行っているヘリカル型核融合炉の個別技術実証を完了した後、2026〜2028年に最終実験装置を、2034年に50〜100MWを発電する初号機を、2040年以降に100MW以上を発電できる本格商用発電炉を完成させる見込みだ。
個別技術実証に関して一例を挙げると、高温超伝導導体では「高磁場中での大電流の通電と高電磁力体制の実証」や「複雑形状コイルの製作と通電性能/クエンチ耐性の実証」を行っている。
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