古河電工が英国のトカマクエナジーにHTS線材を導入、先進核融合原型炉の建設を支援:製造マネジメントニュース
古河電気工業は、先進核融合原型炉「ST80-HTS」で用いる高温超電導線材を、英トカマクエナジーに供給する。子会社の米スーパーパワーと今後数年にわたり、核融合炉の建設に必要な数百kmの高温超電導線材を納める。
古河電気工業(以下、古河電工)は2023年1月12日、先進核融合原型炉「ST80-HTS」で用いる高温超電導(HTS)線材を、英国のトカマクエナジーに供給すると発表した。具体的には、古河電工と米国グループ会社のスーパーパワー(SPI)で、今後数年にわたり、ST80-HTSの建設に必要な数百kmの線材をトカマクエナジーに納める。SPIは既に、ニューヨーク州の事業所工場で、ST80-HTS向けのHTS線材の製造を開始しており、最初の製造バッチを納入済みだ。
ST80-HTSは高磁場球状トカマク型核融合炉で、高磁場球状トカマク型核融合炉の建設で必要な装置「HTS磁石」の構築で古河電工の高温超電導線材が使用される。これは、2030年の前半をめどにクリーンな200MWの電力を供給するというトカマクエナジーの核融合パイロットプラントに向けた工程で、重要な取り組みになる。
高磁場球状トカマク型核融合炉では、1億℃以上の超高温に達する核融合燃料を閉じ込めて燃焼させるのにHTS磁石が必要なだけでなく、HTS磁石は、球状トカマク炉を低価格で商用化し、世界展開を図る上でも欠かせない。
さらにSPIでは、トカマクエナジーのST-E1パイロットプラントや将来の商用核融合炉に必要な線材の供給力を強化するため、設備拡張計画の検討を始めている。
トカマクエナジーは、英国のオックスフォード近郊に本社を構える商業核融合エネルギー開発企業であり、球状トカマクとHTS磁石の複合開発を通じて、商業核融合の世界展開を追求している。
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