青色レーザー出力1kWで高速溶接が可能に、ハイブリッドレーザーの純銅溶接を実演:国際ウエルディングショー
古河電気工業(以下、古河電工)は「2022 国際ウエルディングショー」(2022年7月13〜16日、東京ビッグサイト)において、新型Blue-IRハイブリッドレーザー発振器「BRACE X」を展示、純銅溶接の加工実演を行った。
古河電気工業(以下、古河電工)は「2022 国際ウエルディングショー」(2022年7月13〜16日、東京ビッグサイト)において、新型Blue-IRハイブリッドレーザー発振器「BRACE X」を展示、純銅溶接の加工実演を行った。
BRACE Xは、2021年に発売した「BRACE」の後継機種として開発され、2022年1月に発売された。青色レーザー出力1kW(コア径300μm)、IRレーザー出力3kW(コア径50μm)のレーザー発振器を搭載しており、BRACEの青色レーザー出力150Wと比べて約7倍、IRレーザー出力1kWと比べて3倍の高出力化を実現した。日亜化学工業の高輝度青色レーザー発振器と、古河電工のレーザーモジュール組み立て技術を組み合わせた。
自動車のさらなる電動化により、バッテリー、モーターなどの製造量が飛躍的に伸びると見込まれている。IRレーザーだけでは銅に対して吸収率が低いため加工が安定しない上、スパッタなどの発生が課題となっていた。そこで吸収率が高い青色レーザーで銅を十分に加熱し、溶融池を拡大、銅を液体にすることでIRレーザーの吸収率を上げ、高速かつ高品質な溶接が可能になった。スパッタの発生も抑えた。純銅バスバー溶接に対して2mmを超える溶け込みを実現したほか、高速加工でも1mmの溶け込みが可能になった。
モーターの平角線結線においても、一般的なレーザー溶接の目標溶接速度である1点当たり0.1秒に対し、BRACE Xはレーザー光を制御するガルバノスキャナーを用いることで平角線同士にギャップや高低差がある場合でもこの目標溶接速度を保つことができる。平角線の被覆に覆われていない部分について、従来のレーザー溶接やTIG溶接より加工時間を短くでき、コストも削減できるという。溶接箇所の強度も、TIG溶接と遜色ない結果が出ている。「レーザーは基本的にメンテナンスフリーで、ランニングコストはTIG溶接に比べると安く済む。強度に関しても遜色ないと言い切れるので、置き換えても問題ない」(古河電工)。
会場では車載モーターの製造ラインを模した純銅溶接の加工実演が行われ、多くの来場者が見学していた。
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