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蟹殻が半導体や蓄電池に利用できる可能性を発見:研究開発の最前線
東北大学は、キトサンのナノファイバーシートが、半導体特性と蓄電特性を有することを発見した。キトサンは、通常は廃棄される蟹殻などから得られるバイオマス化合物だ。
東北大学は2024年3月25日、東京大学との共同研究において、キトサンのナノファイバー(ChNF)シートが、半導体特性と蓄電特性を有することを発見したと発表した。キトサンは、通常は廃棄される蟹殻などから得られ、地球上での賦存量がセルロースに次いで2番目に多いバイオマス化合物だ。
研究では、紅ズワイガニの殻から作られたChNFを用いてデバイスを作製。I−V(電流−電圧)特性、AC(交流)インピーダンス、周波数解析、蓄電性を測定した。
その結果、I−Vカーブが負電圧領域に顕著な負性抵抗が現れるn型半導体の特性を示し、昇圧−1〜0V間と降圧+2〜0V間に3桁のスイッチング効果を示すI−V特性を確認した。電圧が増すにつれて蓄電量が直線的に増加し、450Vを超えると急増することも分かった。
低抵抗と高抵抗の2つの半円を持つナイキスト線図の解析により、ChNFシートは、直流および交流電流領域での等価回路を持つと考えられる。これは、120〜350nmの針状や球状形態の甲殻類外骨と細胞壁組織の関与によるものだ。
また、ChNFの伝導電子は、アミニル基(N●H)基の不対電子ラジカルであることが、電子スピン共鳴法の測定により判明した。
研究グループは、植物性ケナフを原料とするセルロースナノファイバーでも半導体特性を見出している。今回の動物性キトサンの結果を合わせ、自然界に広く存在するバイオ素材のエレクトロニクスへの利用が期待される。
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