カーバイドスラリーと排ガス由来のCO2を原料にしたCCU材料の製造技術を開発:材料技術
白石工業は、鴻池組、高圧ガス工業、吉澤石灰工業とともに、アセチレンガス製造時の副生成物であるカーバイドスラリーと排ガス由来のCO2を原料とする軽質炭酸カルシウム(カーバイド軽カル)の製造技術を共同開発したと発表した。
白石工業は2024年3月18日、鴻池組、高圧ガス工業、吉澤石灰工業とともに、アセチレンガス製造時の副生成物であるカーバイドスラリーと排ガス由来のCO2を原料とする軽質炭酸カルシウム(カーバイド軽カル)の製造技術を共同開発したと発表した。
10トンのカーバイド軽カルの製造に成功
これらの4社は、カーバイドスラリーと排ガス由来のCO2を原料として、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization、CO2の回収/利用)材料である軽質炭酸カルシウム(カーバイド軽カル)の製造技術を共同開発した。ラボスケールから検討をスタートし、2023年にスケールアップを進め、2023年10月に実機設備において10トン(t)のカーバイド軽カルの製造に成功した。
このカーバイド軽カル製造技術はCO2を資源と捉え、炭酸カルシウムとして鉱物化し、CO2を固定するカーボンリサイクル技術の1つだ。カーボンリサイクル技術は、日本政府が制定した「カーボンリサイクルロードマップ」において、一層の普及促進が掲げられている。また、早期の社会実装に向けて、政府主導の多様な支援プログラムが進められている。
1tのカーバイド軽カルを製造したときのCO2の固定化量は約440kgになる。このカーバイド軽カルをCCU材料として使用した「コンクリート/地盤改良材」などを、さまざまな建設分野の材料に適用すべく用途開発にも積極的に取り組んでいる。なお、カーバイド軽カルの主な用途としては、コンクリート(プレキャスト/現場打ち)、地盤改良材(流動材・スラリー/粉体)、可塑性充填材、シーリング材、外壁材、各種フィラー(充填材/増量材)がある。
加えて、100年以上におよび蓄積されてきた白石工業の軽質炭酸カルシウム合成技術により、各用途の要求に合わせて粒子制御されたカーバイド軽カルだ(同社と鴻池組の共同で特許出願済み)。
1tのカーバイド軽カルの製造に伴い生じる副産物は50kg以下(5%以下)で少ない。生コンスラッジ、廃コンクリート、鉄鋼スラグなどをカルシウム源として炭酸カルシウムを製造するプロセスと比較しても、副産物の発生量が極めて少ないプロセスだ。
カーバイド軽カルの原料となるカーバイドスラリーは主成分が水酸化カルシウムで、CO2との反応性が高く、導入する排ガス中にCO2の70%以上を固定化できる。
技術開発の背景
アセチレンガスは、カルシウムカーバイドと水の反応により発生する他、製造時の副生成物であるカーバイドスラリーは主成分が水酸化カルシウムで、従来は酸洗浄廃液の中和処理などに活用されていた。一方、生石灰製造により排出されるCO2は、排出量削減に向けたさまざまな取り組みが模索されてきた。そこで、白石工業などの4社は今回の技術開発に踏み切った。
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