パナソニック、屋外の画像から雨や霧を消す「悪天候除去AI」開発:人工知能ニュース
パナソニック ホールディングスは、屋外での画像認識精度を向上する悪天候除去AI「MoFME」を、カリフォルニア大学バークレー校などと共同開発した。画像認識精度を低下させる雨や雪、霧を、単一のモデルかつ従来の3分の1のパラメーター数で除去する。
パナソニック ホールディングスは2024年2月16日、カリフォルニア大学バークレー校、南京大学、北京大学と共同で、屋外での画像認識精度を向上する悪天候除去AI(人工知能)「MoFME(Mixture-of-Feature-Modulation-Experts)」を開発したと発表した。
MoFMEは、異なる天候のパラメーターを重みで表現することで、従来法よりもパラメーターを72%以上、推論時間を39%削減しつつ、天候の影響を除去する。複数種類の天候やタスクにも単一のモデルで対応可能だ。
「特徴変調エキスパート」と「不確実性を考慮したルーター」の2つの手法を導入
特定の天候やタスクに特化したAIモデル(エキスパートモデル)構築の取り組みには一定の成果が見られる。より信頼性を高めるために複数のエキスパートモデルを混合するアンサンブルモデルも研究されているが、パラメーターが激増するため、計算量の面で実用的なモデルは存在していないという。
MoFMEの開発においては、画像認識やセグメンテーションなどのタスクを1つのアンサンブルモデルで、実用的な計算量で処理するため、「特徴変調エキスパート(Feature Modulated Expert)」と「不確実性を考慮したルーター(Uncertainty-aware Router)」の2つの手法を新たに導入した。
特徴変調エキスパートは、特定のエキスパートモデルの線形変調により、異なるエキスパートモデルのパラメーターを表現する。個々のエキスパートモデルのパラメーターを個別に学習する必要がないため、総パラメーター数や計算量を削減できる。
不確実性を考慮したルーターは、入力画像の特徴に応じて各エキスパートモデルの寄与度を切り替えられる。天候除去結果の不確実性が高いモデルの寄与度を下げて、逆の場合は寄与度を上げるように最適化する。これによりアンサンブルモデルの信頼性を高めて、画像認識性能を向上した。
MoFMEをデータセット「RainCityscapes」に対して用いたところ、雨と霧が混在するような複雑な画像に対しても、雨と霧の双方を除去して正解の画像と同レベルの結果が得られた。
さらに、悪天候下ではセグメンテーションの精度が著しく低下するが、MoFMEによりあらかじめ悪天候除去を実施することで、セグメンテーションの精度低下を抑えられることを確認した。
今後、インフラやモビリティ用途など、屋外でも影響を受けにくい画像認識が必要なシーンでの採用が期待されるという。
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