ニュース
生産時のCO2排出量と製造コストを数値化し、溶媒を評価する手法を開発:研究開発の最前線
産業技術総合研究所は、化学品の合成反応に最適な溶媒を特定する新しい手法を開発した。抽出や溶媒のリサイクルまでをシミュレートし、生産過程全体のCO2排出量と製造コストを加味して溶媒を評価する。
産業技術総合研究所は2024年2月19日、化学品の合成反応に最適な溶媒を特定する新しい手法を開発したと発表した。新手法では、反応工程後の抽出や溶媒のリサイクルまでを解析するシミュレーションモデルを構築し、生産過程全体のCO2排出量と製造コストを加味して溶媒を評価できるようにしている。
反応溶媒は種類が変わると、反応収率のみならず、抽出の効率や必要なエネルギーも変化する。新手法では、候補となる溶剤それぞれについて、特徴に合わせ、使用済み溶媒のリサイクル工程までを含めた生産プロセスを設計。算出した物質収支やエネルギー収支、装置サイズから、製造コストが最小となる設計や運転の条件をシミュレートし、この結果を基にCO2排出量を推計する。
反応収率に加え、生産過程全体のCO2排出量と製造コストを数値化し比較することで、効率的かつ低コストな環境負荷が小さい溶媒を特定できる。
新手法の適用により、機能性化学品生産のCO2排出量、製造コストの削減が可能となる見込みだ。今後は、反応溶媒にとどまらず、抽出溶媒などに適用範囲を広げ検証実験を進める。
関連記事
- 新触媒プロセスにより、生物が食べられる糖の高速化学合成に成功
産業技術総合研究所は、生物が食べられる糖を中性条件下で高速化学合成する触媒プロセスの開発に成功した。地球環境に優しいバイオ生産技術の発展が期待される。 - セルロースナノファイバーによる半導体材料の開発を開始
大王製紙は、東北大学、東京大学、産業技術総合研究所と共同で、セルロースナノファイバーによる半導体材料の開発を開始する。東北大学の研究グループによる研究成果を基に、新規バイオ系半導体の実用化を目指す。 - 高い吸収率と高速の熱応答性を兼ね備えたTHz波吸収体を開発、6G通信に対応
産業技術総合研究所は、次世代通信基盤となる第6世代移動通信システムで利用されるTHz波に対し、高い吸収率と高速の熱応答性を兼ね備えたTHz波吸収体を開発した。 - 熱活性型遅延蛍光材料の発光強度の時間変化を数秒で計測する技術を開発
産業技術総合研究所は、熱活性型遅延蛍光材料から放射される発光強度の時間変化を、数秒で計測する技術を開発した。 - 窒素廃棄物問題の解決策となる窒素循環技術、浮世絵で使われた青色顔料を活用
「カーボンニュートラルテクノロジーフェア 2023冬 製造業の技術と持続可能な未来を考える」で産業技術総合研究所(産総研) 首席研究員/ナノブルー取締役の川本徹氏が行った基調講演「持続可能な窒素管理に関する国内外の動きと窒素循環技術の開発」を紹介する。 - ロジック半導体の性能向上に貢献、産総研と都立大が次世代トランジスタ材料を開発
産業技術総合研究所は、ロジック半導体の性能向上に貢献するトランジスタ材料を開発した。接触界面抵抗の低減技術の開発により、n型MoS2トランジスタの性能向上への貢献が期待できる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.