日系メーカーの新車生産は本格的に回復、コロナ禍前に届かない企業も:自動車メーカー生産動向(4/4 ページ)
半導体不足などサプライチェーンの混乱で長らく低迷していた自動車生産が本格的な回復を見せている。日系乗用車メーカー8社の2023年の世界生産合計は、3年連続で前年実績を上回った。半導体不足が緩和し、国内生産や北米生産の回復がけん引した。
マツダ
8社の中で最も回復基調を示したのがマツダだ。2023年のグローバル生産台数は、前年比14.8%増の125万3654台と2年連続で増加した。半導体の供給改善が進んだことや米国工場の2直化などが要因。とはいえ、依然として続く半導体不足の影響や、中国での販売低迷などもあり、コロナ禍前の2019年との比較では15.7%減にとどまった。
このうち世界生産の3分の2以上を占める国内生産は、前年比14.2%増の83万9170台と4年ぶりにプラスへ転じた。半導体の供給改善や、前年の中国からの部品供給不足、ゼロコロナ政策の反動などが要因。車種別では「CX-5」の同3.5%増の他、「マツダ3」(同31.4%増)や「CX-30」(同50.1%増)が大きく伸長した。
海外生産は、前年比16.1%増の41万4484台と2年連続のプラスだが、地域によって明暗が分かれた。北米は、メキシコがマツダ3やCX-30の増産などにより、同36.8%増と伸長。さらに米国工場も2直化したことで同98.1%増と倍増した結果、北米トータルでは同47.4%増と北米で生産する日系5社で最も高い伸びを見せた。一方で、タイは現地の需要に合わせて「マツダ2」やCX-30の生産調整を実施したこともあり、同21.3%減と低迷した。
中国は、一汽乗用車での「マツダ6」と「CX-4」の生産委託を2023年4月に終了。唯一の生産拠点である長安マツダ汽車でも「CX-8」の生産を終了した。ただ、6月から新たに「CX-50」の生産を開始した。台数ではマツダ3やCX-5は前年を上回ったが、CX-30の在庫調整を実施したことで、2023年の中国生産は前年比10.3%減だった。
足元の実績も着実に回復しており、2023年12月単月のグローバル生産台数は、前年同月比13.0%増の10万2326台と3カ月連続で増加した。このうち国内生産は同7.0%増の6万6713台と4カ月連続で前年実績を上回った。車種別では主力モデルのCX-5が同20.1%増、CX-30は同72.2%増と大きく伸長した。国内向けCX-8の生産を終了した代わりに、北米向けの2列シートSUVの新型車「CX-70」の生産を開始した。
国内以上に好調なのが海外生産で、前年同月比26.4%増の3万5613台と6カ月連続のプラス。北米は、メキシコがCX-30の増加で同5.7%増となった他、米国が2直化により同96.2%増と倍増した。中国も前年実績が低水準だったことと、CX-50の生産開始により同113.9%増と2倍超の伸びを見せた。ただ、タイは市場低迷が続いており、マツダ2やCX-3の在庫調整により同41.6%減と生産も大幅に減らしている。
三菱自動車
三菱自の2023年のグローバル生産台数は、前年比1.1%増の102万4010台と2年ぶりに前年実績を上回った。プラスを確保したが、コロナ禍前の2019年との比較では25.2%減という低水準だ。特に海外生産が低迷し、同8.4%減の52万3372台と2年連続の減少。8社の海外生産では最も落ち幅が大きかった。
主力拠点のタイが前年比1.6%減と伸び悩んだことに加えて、2023年3月から生産を停止し10月に車両生産と販売から撤退を表明した中国事業が同90.3%減と大きく足を引っ張った。インドネシアは同1.1%増とプラスだったが、アジアトータルでは同6.4%減となった。
海外と比較すると国内生産は好調で、前年比13.6%増の50万638台と3年連続で増加した。半導体の供給改善に加えて、北米向け「アウトランダー」の好調や、軽自動車の新型車「デリカミニ」がヒットし、国内販売に大きく貢献した。
ただ、足元の実績は振るわない。2023年12月単月のグローバル生産は、前年同月比13.3%減の7万5301台と3カ月ぶりのマイナスだった。12月の世界生産での2桁パーセント減は、不正による稼働停止のダイハツを除くと三菱自のみで、8社の順位でもスバルを下回り最下位となった。特に海外生産が厳しく、同21.2%減の3万3677台と7カ月連続のマイナス。市場が低迷しているタイは同13.1%減、インドネシアも同23.6%減と主力拠点がそろって低迷した。加えて撤退を決めた中国が実績を押し下げ、アジアトータルでは同22.0%減だった。
国内生産も、前年同月比5.6%減の4万1624台と3カ月ぶりに減少した。輸出は同31.8%増と伸長した他、好調なデリカミニも純増となったものの、軽EVの日産「サクラ」と三菱自「eKクロスEV」の需要が一巡して急減。「デリカD:5」や「アウトランダーPHEV」といった国内向け主力車種も大きく台数を減らした。
スバル
スバルの2023年のグローバル生産台数は、前年比13.0%増の95万9147台と2年連続で前年実績を上回った。前年に比べて半導体不足が緩和したことが要因で、コロナ禍前の2019年との比較でも2.8%減という水準まで回復している。主要市場の米国での受注も好調で、供給台数の増加で米国販売も4年ぶりにプラスとなった。このうち国内生産は同8.1%増の60万8327台と2年連続のプラス。海外生産は同22.6%増の35万820台と2年連続で増加した。
12月単月のグローバル生産台数は、前年同月比5.4%増の8万189台と11カ月連続の前年超え。このうち国内生産は、同5.3%減の5万4219台と2カ月ぶりのマイナスだったが、海外生産は同37.9%増の2万5970台と11カ月連続のプラスで好調を維持している。
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