新車生産がコロナ禍前を超える水準、6社が前年同期比2桁パーセント増:自動車メーカー生産動向(1/3 ページ)
日系自動車メーカーの生産が力強い回復を見せている。乗用車メーカー8社の2023年11月の世界生産台数は、スズキとダイハツ工業を除く6社が前年実績を上回り、8社合計では10カ月連続で増加した。
日系自動車メーカーの生産が力強い回復を見せている。乗用車メーカー8社の2023年11月の世界生産台数は、スズキとダイハツ工業を除く6社が前年実績を上回り、8社合計では10カ月連続で増加した。生産台数自体もコロナ禍前の2019年11月を上回る実績であり、自動車に対する底堅い需要と、半導体の供給改善が着実に進んでいる様子が伺える。さらに、低迷が続いていた中国生産は、前年が「ゼロコロナ政策」で工場を停止していた反動により急回復。ゼロコロナ政策はサプライチェーンにも影響を及ぼしていたこともあり、好調な国内や北米の生産を後押しする格好となった。
8社合計の世界生産は、前年同月比13.0%増の238万3436台だった。前年割れとなったスズキとダイハツを除く6社が2桁パーセント増を記録した。このうち海外生産は、同13.2%増の156万4063台と2カ月連続のプラス。スズキ、ダイハツ、三菱自動車を除く5社が前年実績を上回った。半導体の供給改善で好調な北米がけん引し、北米生産の5社合計は同30.5%増と11カ月連続で増加した。加えて前年のゼロコロナ政策の反動増があった中国は、5社合計が同32.5%増と7カ月ぶりに前年実績を上回った。
国内生産も好調を維持している。前年同月比12.8%増の81万9373台と、11カ月連続のプラス。ダイハツ以外の7社が増加した。半導体不足の解消と、中国のゼロコロナ政策の反動による部品供給改善の効果も表れた。
国内 | 海外 | (うち北米) | (うち中国) | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
トヨタ | 314,917 | 611,656 | 174,329 | 172,185 | 926,573 |
18.3 | 7.9 | 15.1 | 13.6 | 11.2 | |
ホンダ | 76,272 | 338,157 | 145,431 | 130,573 | 414,429 |
5.7 | 33.2 | 40.7 | 38.1 | 27.1 | |
日産 | 68,683 | 248,550 | 104,131 | 88,015 | 317,233 |
21.3 | 29.2 | 42.9 | 83.4 | 27.4 | |
スズキ | 90,896 | 171,903 | - | - | 262,799 |
2.9 | ▲ 6.2 | - | - | ▲ 3.2 | |
ダイハツ | 83,671 | 75,729 | - | - | 159,400 |
▲ 0.7 | ▲ 1.8 | - | - | ▲ 1.2 | |
マツダ | 73,560 | 40,433 | 25,994 | 8,709 | 113,993 |
7.5 | 15.1 | 44.9 | 46.5 | 10.1 | |
三菱 | 53,045 | 44,588 | - | 0 | 97,633 |
57.3 | ▲ 9.0 | - | - | 18.0 | |
スバル | 58,329 | 33,047 | 33,047 | - | 91,376 |
2.4 | 35.2 | 35.2 | - | 12.2 | |
合計 | 819,373 | 1,564,063 | 482,932 | 399,482 | 2,383,436 |
12.8 | 13.2 | 30.5 | 32.5 | 13.0 | |
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、% ※北米は米国、カナダ、メキシコの合計 |
好調が続く国内生産だが、足元では懸念も生じている。衝突試験で不正があったダイハツは2023年12月20日、国内外で販売する64車種とエンジン3機種(生産終了モデル含む)を対象に25の試験項目で174個の不正が判明したと発表。これを受けて同年12月25日以降、OEM(相手先ブランドによる生産)供給モデルを含む全車種の生産と出荷を停止しており、生産再開のめども立っていない状況だ。また、2024年1月1日には石川県を震源とする能登半島地震が発生。部品メーカーの一部が被災するなど、サプライチェーンにも影響が及んでいる。
トヨタ自動車
メーカー別に見ると、トヨタ自動車の2023年11月のグローバル生産台数は、前年同月比11.2%増の92万6573台と11カ月連続で前年実績を上回り、11月の世界生産として過去最高を更新した。
このうち国内生産は、前年同月比18.3%増の31万4917台と11カ月連続のプラス。新型車を中心に国内市場で受注が好調な他、部品供給が回復していることが要因だ。誤った部品を引き当てたことを理由に「ノア/ヴォクシー」などを生産するトヨタ車体 富士松工場で稼働を停止したが、大幅増を確保した。それでも、新型車や人気車種を中心に受注停止や納期の長期化は依然として続いており、国内市場におけるトヨタ車の人気の高さが伺える。また、輸出も好調で同9.9%増と7カ月連続のプラスだった。
海外生産も好調だ。前年同月比7.9%増の61万1656台と2カ月連続で前年実績を上回り、11月として過去最高を記録した。地域別では、北米が同15.1%増と8カ月連続の増加。半導体の供給改善効果が表れた。欧州も北米同様に需要好調や半導体の供給改善で同8.7%増だった。また、低迷が続いていた中国は、依然としてEVシフトを含めた販売競争の激化は続いているものの、前年がゼロコロナ政策による稼働停止を実施したことに対する反動もあり、同13.6%増と7カ月ぶりにプラスへ転じた。
中国以外のアジアは、インドが前年同月比70.30%増、インドネシアも同18.3%増と好調だったが、主力拠点のタイが経済低迷などにより同23.7%減と大幅に減少した。それでも中国の回復によりアジアトータルでは同5.4%増と6カ月ぶりにプラスとなった。
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