米国のEVシフト減速に対するスバル日産ホンダの声:自動車業界の1週間を振り返る(2/3 ページ)
1月下旬から先週にかけて、2024年3月期第3四半期の決算発表ラッシュでした。自動車メーカーやサプライヤーの中には過去最高の業績を達成した会社が多く、好調さが伺えます。
ホンダ
ホンダの2023年4〜12月期決算は売上高が前年同期比19.8%増の14兆9994億円、営業利益が同46.7%増の1兆763億円、当期純利益が同49.1%増の8696億円でした。四輪車の販売台数増加や商品価値向上に合わせた値付け、原材料価格の低下などが増益に貢献しました。値付けによる増益要因は2700億円で、このうち四輪車で2000億円弱のプラスを生み出しています。グループ販売台数は四輪事業が前年同期比13.6%増の311.4万台、二輪事業が同2.3%減の1396.1万台です。
四輪事業は品質関連費用が発生したものの、小売り実績が前年同期比42.8%増と好調だった北米を中心に販売台数が増えたことで営業利益が大幅に増加しています。日本での生産回復も販売増加に貢献しました。北米ではHEV(ハイブリッド車)が好調です。
二輪事業は、ベトナムが景気減速で販売が減少しましたが、インドネシアやブラジル、欧州での販売台数が増加したことで過去最高の営業利益と営業利益率を達成しました。台数が減少した地域でもコストダウン活動や値付けでカバーしたとしています。
2023年度通期の業績見通しは前回予想から上方修正しています。売上高が前回予想から2000億円増の20兆2000億円(前年度比19.5%増)、営業利益が500億円増の1兆2500億円(前年度比60.1%増)、当期純利益が300億円増の9600億円(同47.4%増)を計画しています。アジアの厳しい市場環境や品質関連費用の増加があるものの、収益改善施策の強化や為替の影響が反映されています。
ここで言及された品質関連費用は樹脂製インペラを使った燃料ポンプ関連ではなく、米国で届け出済みのシートウエイトセンサーに関するもので550億円の積み増しを計上しています。また、八千代工業の取引における減損が450億円発生しています。
2023年度通期の四輪事業は、タイやインドネシアで販売減少を見込みますが、中国での販売増加によりグループ販売台数は前回予想を据え置きました。プレゼンスの維持を目的に、ホンダは中国で収益性よりも販売のボリュームを確保することを重視しています。2024年度はEVの新型車を投入することから中国での販売は2023年度以上の水準を目指します。二輪事業はベトナムや日本で販売減少を予想していますが、インドやタイでの販売増加を想定してグループ販売台数の見通しを据え置きました。ベトナムの市場低迷は2024年秋ごろまで続きそうだと見込んでいます。
長期的にはEVシフト/ホンダの二輪事業はなぜ強い?
米国のEV市場について、ホンダは鈍化していることを認めつつも、長期的には電動化が進むと見込んでEVの販売目標は変えていません。ユーザーが必要とするEVを提供していき、そこから生まれる収益を生かしていくことが重要だとしています。その一方で、米国ではHEVの人気や評価が高まっているため、「シビック」のHEVモデルの投入や、HEVの小型化や性能と収益性の進化などに力を入れます。欧州も同様です。中国、タイやインドネシアなどはそれぞれの地域のEVシフトの進展に合わせて柔軟な戦い方をしていく考えです。
決算会見の最後にホンダ 執行役 最高財務責任者の藤村英司氏は「質問には出ませんでしたが、アピールも兼ねてお話しておきたいことがあります」と前置きして「なぜホンダの二輪事業が強いのか」を説明しました。
コロナ前の2019年度、二輪事業の販売台数はグローバルで2000万台(二輪事業の営業利益は2900億円)でした。2023年度は1800万台の販売計画ですが、5000億円を超える見通しです。台当たり利益は2万円から4万円に増えています。
ホンダでは2010年代からパワートレインやフレームをモデルや地域を超えて共通化する「メガモジュール戦略」を推進しており、収益体質の向上が成果を挙げています。従来はアジアで稼いできましたが、南米や欧州の市場でも高収益化が進み、6割がアジア、2割がブラジル、日米欧など先進国が2割と収益が分散しています。
商品の魅力向上、コスト低減、販売力、資金力といった強みを掛け合わせていくことで、今後も二輪事業は成長できると藤村氏は自信を見せます。電動バイク(EVバイク)が既存の二輪事業に上乗せされることも、追い風だとしています。バッテリーに関しては四輪事業での成果が二輪事業にも展開できることが強みになるとしています。
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