ミリ波帯とSub6帯で反射や吸収、透過ができる電波制御シートを開発:材料技術
マルアイは、特定の周波数の電波を選択的に反射、吸収、透過できる電波制御シートを開発した。5Gで使用されるミリ波帯とSub6帯で、用途に合わせて対応する周波数をカスタマイズできる。
マルアイは2024年1月25日、特定の周波数の電波を選択的に反射、吸収、透過できる電波制御シートを開発したと発表した。第5世代移動通信システム(5G)で使用されるミリ波帯とSub6帯で、用途に合わせて対応する周波数をカスタマイズできる。東京都市大学、青山学院大学との産学連携による成果だ。
開発したのは、「周波数選択性電波反射シート」「周波数選択型電波吸収シート」「超狭帯域型電波吸収シート」の3種。金属板や金属酸化物を含む樹脂で構成される従来の電波制御シートに比べ、いずれも軽く薄型で柔軟性があり、通信機器の設計自由度を損なうことなく、誤作動や電波障害を抑える。オフィスや工場の天井などへの設置も容易だ。
周波数選択性電波反射シートは厚みが1mm以下で、特定の周波数の電波のみを反射し、その他の電波を透過する。周波数の適応範囲目安は1G〜30GHzで、印刷パターンを変えることで対応周波数を調整できる。また、グラビア印刷技術などの活用により、低コストで大きな面積のシートを製造できると見込まれている。
周波数選択型電波吸収シートは、特定の周波数の電波のみを吸収し、その他の電波を反射する。抵抗膜、誘電体層、反射膜の3層から成り、抵抗膜にカーボンナノチューブ(CNT)を高分散させた高導電性インキを用いている。電波吸収性能は20dB(99%)以上。周波数の適応範囲目安は3G〜50GHzで、シートの厚みを変えることで対応周波数を調整できる。
超狭帯域型電波吸収シートは、帯域幅10%以下の超狭帯域で特定の周波数の電波のみを吸収し、その他の電波を反射する。1mm以下の厚みで、電波吸収性能は20dB(99%)以上だ。周波数の適応範囲目安は2G〜50GHzで、パッチ設計やシートの厚みを変えて対応周波数を調整できる。反射シートと同様に、グラビア印刷技術などを用いて、大きな面積のシートを低コストで製造できる見込みだ。
同社は、シートの実用性や機能性を向上するため、さまざまな環境での実証実験やユーザーへのヒアリングを実施し、2025年頃の製品化を目指す。
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