めっき可能なPPSコンパウンドを開発、特殊なエッチング工程は不要:材料技術
DICは、塚田理研工業および吉野電化工業と共同で、めっき可能なポリフェニレンスルファイド(PPS)コンパウンド「DIC.PPS MP-6060 BLACK」を開発した。
DICは2024年1月10日、塚田理研工業および吉野電化工業と共同で、めっき可能なポリフェニレンスルファイド(PPS)コンパウンド「DIC.PPS MP-6060 BLACK(以下、MP-6060)」を開発したと発表した。MP-6060とめっき技術を組み合わせることで、特殊なエッチング工程を必要とせず、既存のプラスチックめっきラインで金属めっき処理が行え量産に対応する。
PPSに金属めっきすることにより、耐久性が必要とされる電子機器筐体やコネクターなどの金属部品の樹脂化と電磁波シールドの両立が可能となる。特に、電動化や自動運転化が進む車載部品では、ECU(電気制御ユニット)やADAS(先進運転支援システム)の筐体などの樹脂化が軽量化につながり、燃費効率と走行可能距離を向上させることで、性能とサステナビリティの両面での貢献が見込まれる。
今後は、EV(電気自動車)やPCなどの耐久性が必要となる電子機器分野を中心に需要を取り込むことで、2030年の売上高30億円を目指す。
MP-6060の特徴
MP-6060は、強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性に優れるPPSで、各種金属めっきを施すことにより、周波数帯に合わせた電磁波シールド特性や金属外観などの価値を付与できる。加えて、DICのPPS配合技術と塚田理研および吉野電化のめっき技術を掛け合わせることで、汎用プラスチックのめっきラインでめっきが行える。
耐薬品性の高いPPSめっきに使用される特殊な薬液管理も不要で、ブラスト処理が苦手とする複雑形状にも均一にめっきが可能だ。高い成形流動性も兼ね備えているので、リブや冷却流路などが必要な複雑な形状にも成形できる。PPSの特徴である過酷な環境での優れた耐久性も備えていため、車載部品の樹脂化による金属代替や軽量化に対応し、自動車の燃費効率の向上と走行距離の改善に貢献する。
MP-6060の開発背景
近年、スマートフォンやWi-Fi機器など、電磁波が通信手段として幅広く利用されている。さらに、スマート家電や自動運転の普及により、電磁波の使用がますます増加すると予想されている。一方、電子機器を密集した配置で設計を行う場合には、信号干渉による誤作動や故障を防ぐため、ノイズとなる電磁波を遮断あるいは吸収するなどの対応が必要となっています。
また、スーパーエンプラのPPSは、耐久性や軽量化、加工性などに優れているため、車載電子機器などに使用されてきた。金属などの電気導体では電磁波の遮蔽効果が得られるが、プラスチックは電磁波を透過するため、筐体として電磁波を防ぐにはプラスチック表面に金属皮膜を形成するなどの電磁波シールド技術の使用が必要となる。
しかしながら、PPSは、その高い耐薬品性から一般的なプラスチックのめっきで用いられるエッチング溶液が前処理に使用できず、金属膜との密着が難しいという課題があった。解決策として、これまでめっき密着性を付与するために「ブラスト処理」「プラズマ処理」「フッ酸処理」「濃硝酸処理」などの特殊なエッチング工程が必要だった。
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